御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
大学生男子が気付くほどにオカシイ様子ってどんなだったんだろう。そんなになるほど、係長の心は苦しかったって事なんだろうか。


「香奈美さんがそんな顔することないんだよ。今はもう、大丈夫なんだし。ただね、食事を愉しむって気持ちはどこかに忘れて来ちゃったみたい」


きっと今、私は凄く情けない顔をしてるんだろう。でも、無理に笑うことさえ出来ない。

体調に合わせて、好き嫌いを隠さず、無理ない量を食べる。それで大丈夫って事になる?そんな事は食事の大前提の話だ。


なのに、愉しめないのに、もう大丈夫だと言う係長を見て、そうですねと言う事が出来ない。


「自分がこんなだからさ。香奈美さんが嬉しそうに食べてるの見た時、本当に感動したんだ。大袈裟かもしれないけど、見てるだけで幸せになれた。
だからもっと見たいって、俺にこんな気持ちを味わわせてくれた人の事知りたいって思ったんだ」

言い終わってスッキリしたのか、係長は私を見て優しく微笑んだ。
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