御曹司様のことなんて絶対好きにならない!
「そんな‥‥嬉しそうに食べる人なんて私じゃなくてもいっぱいいますよ。もっと可愛い人にだっていっぱい」


急に甘い瞳で見られても、恋愛初心者のわたしは対処出来ない。

まだ私の中では小さな係長が笑顔を浮かべたまま食べ物を無理矢理飲み込んでいるのだ。


困り顔の私の頭を係長がポンポンも撫でてくれた。

「香奈美さん、感情移入しすぎ。俺ももう大人だし、ホントに大丈夫だから。それに母親がいなくなった後は親父も兄貴も俺のために一生懸命時間作って一緒にいてくれたから。誰も恨んでないし、愛されて育ったと思ってる」



確かに常務や社長は係長を愛して、大事に思ってると思う。それは分かるんだけど。でも、それでも私の中の我慢してる小さな係長が消えてくれないんだもん‥‥


困った顔のまま、目に涙まで浮かんでしまった私に、係長はふっと笑う。

「そんなトコも好きなんだけどね」

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