ずるいです……部長。


 ◇


「決まりだな。新しい企画」

「さすがです、部長!」


なにも、できなかった。部長のトークに圧倒されて、隣で頷くことしか。


社内では滅多に見せない……部長の笑顔。あれは、笑顔スマイルでもなんでもないと思う。

心から、仕事が楽しいのだと思う。だからこそ、全力で向き合えるのだと。


「お前を連れてきて正解だった」


(え?)


私……?

私の話したことと言えば、先ほどお会いした神田先生という人物に、それこそいちファンとして、先生の本の感想を述べたまで……

思い出して顔が熱くなるくらいの素人意見を。


「さっき別れ際に、俺にだけこう仰っていたよ……〝若いのに仕事に対する姿勢もいいし、良い部下を持ったな。無茶を言ってすまなかった〟と」


「そんな……私は、ただ、思ったことを話したまでです!」


「祝杯だ。ホテルに着いたら、一緒に祝うか」


「へっ……ほ、ホテル!? 泊まるんですか?」


部長と!?

ホテル!??


「当たり前だろう。野宿する気か?」

「……っ、新幹線は……」

「とっくにないよ」


そんな……


「安心しろ、2部屋とってるから」


(!)


そ、そっか。そうだよね……!!

なに、変なことを考えているのだろう、私ったら。いくらなんでも一緒に泊まるわけないじゃない。


「乾杯くらいは、一緒にしようじゃないか」

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