近すぎて
認めてしまった恋心が大きく育ったからといって、それが甘酸っぱい幸せな感情をもたらしてくれるようなお年頃は、とっくの昔に過ぎている。
むしろ、比例して不安までもが膨らんでいく。
たった一年で変わった私の気持ちのように、慎司の心はもう違う方を向いてしまってはいないだろうか。
答えを聞かなくて済むように、ここへは来ないつもりではないのか。
後ろ向きな考えばかりが、それこそシャンパンの泡のように次から次へと湧き上がってきては、それを必死に否定することを繰り返す。
もし、本当に彼が来なかったら。
テーブルの上に置いたままのバッグを見遣る。
この部屋の宿泊代、使わずにいた冬のボーナスをそのまま持ってきたけど足りるかな?
シャンパンって、別料金じゃないよね?
逃避するように現実的なことを考え始めれば、ガラスの小皿にのせられた、宝石のようなチョコレートにも食指が動かない。
大人が三人はゆったりと座れるスプリングの効いたソファの片隅で膝を抱え、毛布を被って、お馴染みのバラエティ番組を観るともなしに眺めていた。
そこまでしてもこの部屋を去らないのは、恭一のときのようになにもせず、後悔だけをしたくなかったから。
たとえ自己満足で終わったとしても、伝えたい想いがある。
いつの間にか番組が終わり、スポットニュースが、高速道路で起きた大規模な玉突き事故を伝えていた。
画面は、大粒の雪が降りしきる道路と、延々と連なり動かない自動車のライトの列を映し出す。
続いて、フロント部分が大破した品川ナンバーの黒い乗用車の映像を流してから、次のニュースが読まれる。
ほんの一瞬、後ろからの画だったから見間違いかもしれない。同じ車種の同じ色なんて、珍しくはないはずだ。
第一、彼があんな雪深い地方に行ったとは限らない。
そう自身に言い聞かせつつ、頭は何回か家まで送ってもらったことのある、慎司の車のナンバーを思い出そうとしていた。
出しっ放しの携帯は、彼と不通のまま。
路肩に停められた救急車の赤灯が、CMになっても目の前をちらつく。
忙しくチャンネルを変えてみても、震えの止まらない指先でネット検索しても、事故の起きた場所と時間、重軽傷者が複数出た、という情報以上のことはわからない。
とりあえずは『死者』がいないということに小さく安心して、携帯のストラップを握り締める。
慎司が虫除けといったこれは、調べてみたら唐辛子ではなく『コルノ』という角の型をした幸運のお守りだそうだ。魔除けなどの意味もあるらしい。
私なんかより、彼が持っていたらよかったのに。
神様でも仏様でも構わない。
この際唐辛子や藁にもすがる勢いで、慎司の無事を祈っていた。
むしろ、比例して不安までもが膨らんでいく。
たった一年で変わった私の気持ちのように、慎司の心はもう違う方を向いてしまってはいないだろうか。
答えを聞かなくて済むように、ここへは来ないつもりではないのか。
後ろ向きな考えばかりが、それこそシャンパンの泡のように次から次へと湧き上がってきては、それを必死に否定することを繰り返す。
もし、本当に彼が来なかったら。
テーブルの上に置いたままのバッグを見遣る。
この部屋の宿泊代、使わずにいた冬のボーナスをそのまま持ってきたけど足りるかな?
シャンパンって、別料金じゃないよね?
逃避するように現実的なことを考え始めれば、ガラスの小皿にのせられた、宝石のようなチョコレートにも食指が動かない。
大人が三人はゆったりと座れるスプリングの効いたソファの片隅で膝を抱え、毛布を被って、お馴染みのバラエティ番組を観るともなしに眺めていた。
そこまでしてもこの部屋を去らないのは、恭一のときのようになにもせず、後悔だけをしたくなかったから。
たとえ自己満足で終わったとしても、伝えたい想いがある。
いつの間にか番組が終わり、スポットニュースが、高速道路で起きた大規模な玉突き事故を伝えていた。
画面は、大粒の雪が降りしきる道路と、延々と連なり動かない自動車のライトの列を映し出す。
続いて、フロント部分が大破した品川ナンバーの黒い乗用車の映像を流してから、次のニュースが読まれる。
ほんの一瞬、後ろからの画だったから見間違いかもしれない。同じ車種の同じ色なんて、珍しくはないはずだ。
第一、彼があんな雪深い地方に行ったとは限らない。
そう自身に言い聞かせつつ、頭は何回か家まで送ってもらったことのある、慎司の車のナンバーを思い出そうとしていた。
出しっ放しの携帯は、彼と不通のまま。
路肩に停められた救急車の赤灯が、CMになっても目の前をちらつく。
忙しくチャンネルを変えてみても、震えの止まらない指先でネット検索しても、事故の起きた場所と時間、重軽傷者が複数出た、という情報以上のことはわからない。
とりあえずは『死者』がいないということに小さく安心して、携帯のストラップを握り締める。
慎司が虫除けといったこれは、調べてみたら唐辛子ではなく『コルノ』という角の型をした幸運のお守りだそうだ。魔除けなどの意味もあるらしい。
私なんかより、彼が持っていたらよかったのに。
神様でも仏様でも構わない。
この際唐辛子や藁にもすがる勢いで、慎司の無事を祈っていた。