近すぎて
食後のコーヒーを飲みながら私が心配していた事故の話をしたところ、そのための渋滞にはまっていたけれど直接は関わっていないと言われて安心する。

慎司からは携帯が繋がらなかった理由を教えられ、呆れることしかできなかった。

「でも、泊まっていけばって……」

「ああ、それは猪野さんの奥さん。元気で若々しい人だけど、俺たちとそう変わらない年齢のお子さんがいる人だぞ?」

答え合わせをしてみれば、どれもこれもが拍子抜けするほど簡単なものばかり。
ひとりで右往左往していたことが、恥ずかしくって情けない。

「もしかして妬いてた、とか?」

図星を指されて、途端に顔が熱くなる。

「違っ!……わない」

いまさら否定する必要などない。それでもやっぱり恥ずかしさに顔は俯いてしまう。その私の腕が上に引っ張られた。

「十二時になったからいいかな」

独りごちた慎司にそのまま手をとられて、奥のベッドルームへ連れていかれる。私はあの夜と同じように大きな窓を背にして立たされた。

「『今日』でちょうど一年だ。あのときの約束の答えを教えて欲しい。薫はこれからずっと、俺のことをみていてくれる?」

私はいったいなにを疑っていたのだろう。
少し緊張した声で真っ直ぐに見据えられ、慎司の気持ちが変わらず自分にあったことに感謝する。

「これから『も』よ。この一年、ずっと慎司ばかりをみてきた気がする。会えなくても、連絡がなくても。ずっとあなたが私のここにいた」

胸に当てた手にはどんどん速くなる鼓動が伝わって、自分の気持ちを人に伝えることがこんなに勇気の要ることだとあらためて思い知らされた。
それでも、言葉にして伝えたいことがある。

「あなたに恋してる。これが私の出した答え」

言い終えた瞬間、私は慎司の腕の中にいた。息苦しいほど強く抱き寄せられた耳元に、安堵のため息がかかる。
一気に縮まった距離が心地よくて、私も腕を彼の背に回した。

熱い手の平が頬を包んで、自然と互いの顔が近づいて……。

「ええっと、さ」

唇が触れ合うまであとほんの僅か、というところで彼の動きが停止する。
私は閉じかけていた目を大きく見開いた。

「いいんだよな?……して」




















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