近すぎて
ああ。あの夜の私ってば、彼になんてことをしてしまったんだろう。
確認してきた慎司の表情があまりにも真剣だったから、申し訳ないけれど小さく吹き出してしまう。
でもどうしてなのか、微かに耳たぶを赤くして困ったふうに眉を寄せる彼がたまらなく愛おしく思える。
「そうねえ。告白してお互いの気持ちを確かめたあとは、まずデートから?」
「食事や映画なら何度もした」
意地の悪い提案に慎司は不機嫌に答えた。うん、たしかにそれは済んでいる。
「遊園地も動物園もまだだけどね。じゃあ、次のステップは……手を繋ぐ?」
「薫。一年前のこと、覚えてないとは言わせないからな」
そうだった。ここに来るときに、手を繋いであの場から連れ出してくれたんだっけ。あれが初めてだったかな?
当時の回想の中に恭一と小百合の姿をみつけても、もう以前のような胸の痛みは感じなかった。
もの思いにふける私の顎先が掴まれ上を向けられる。強引に上げられた視線の先には胡乱な光を灯す慎司の瞳。
「『お泊まり』も経験済みだ。いくぞ!」
宣言してからされても困るんですけど、などという私の抗議は、今度こそ完璧に無視された。
最初の意気込みとは裏腹に慎司は掠めるだけのキスをして、反応を確かめるように一旦顔を離す。
私は目を閉じてそれに応えた。
軽い音をたてながら繰り返される口づけは、次第に熱を帯びて湿った音に変わる。
ふたりの間にはもうなにも挟まる余地などないのに、私はより側に近づきたくて腕を慎司の首に絡ませた。
彼の手が、支えていた私の背中を優しく撫でながら徐々に上を目指す。
吐息を絡め合うようなキスに蕩けされられ夢中になっていたはずなのに、慎司の指先がワンピースのファスナーの持ち手に辿り着いた瞬間、弾けるように意識が覚醒した。
駆け足で恋の階段を昇ろうとする彼に、待ったをかける。
「ゴメン!本当にゴメンっ!!お願いだから、ちょっと待って」
突然唇が離れたことに憮然とする慎司に、私はひたすら謝った。
「……先に、シャワーを浴びてもいい?」
「え?別に俺は気にしないけど」
私が気にする。気にさせてください!
「ほら、女子にはいろいろと心と体の準備というものが……」
ごにょごにょと自分でも苦しいと思う言い訳を続ける。
「わかった。ここまで待ったんだから、あと十分くらいは我慢してやる」
慎司は申し訳なさに縮こまる私の頭をぐしゃぐしゃっとかき混ぜ肩をすくめてから、片方だけ口角をあげて意地悪そうに笑う。
「なんだったら、一緒に入るか」
「……ゴメン。それも無理」
私の一方的なわがままにより、甘い時間はあと少し先に延ばされた。
確認してきた慎司の表情があまりにも真剣だったから、申し訳ないけれど小さく吹き出してしまう。
でもどうしてなのか、微かに耳たぶを赤くして困ったふうに眉を寄せる彼がたまらなく愛おしく思える。
「そうねえ。告白してお互いの気持ちを確かめたあとは、まずデートから?」
「食事や映画なら何度もした」
意地の悪い提案に慎司は不機嫌に答えた。うん、たしかにそれは済んでいる。
「遊園地も動物園もまだだけどね。じゃあ、次のステップは……手を繋ぐ?」
「薫。一年前のこと、覚えてないとは言わせないからな」
そうだった。ここに来るときに、手を繋いであの場から連れ出してくれたんだっけ。あれが初めてだったかな?
当時の回想の中に恭一と小百合の姿をみつけても、もう以前のような胸の痛みは感じなかった。
もの思いにふける私の顎先が掴まれ上を向けられる。強引に上げられた視線の先には胡乱な光を灯す慎司の瞳。
「『お泊まり』も経験済みだ。いくぞ!」
宣言してからされても困るんですけど、などという私の抗議は、今度こそ完璧に無視された。
最初の意気込みとは裏腹に慎司は掠めるだけのキスをして、反応を確かめるように一旦顔を離す。
私は目を閉じてそれに応えた。
軽い音をたてながら繰り返される口づけは、次第に熱を帯びて湿った音に変わる。
ふたりの間にはもうなにも挟まる余地などないのに、私はより側に近づきたくて腕を慎司の首に絡ませた。
彼の手が、支えていた私の背中を優しく撫でながら徐々に上を目指す。
吐息を絡め合うようなキスに蕩けされられ夢中になっていたはずなのに、慎司の指先がワンピースのファスナーの持ち手に辿り着いた瞬間、弾けるように意識が覚醒した。
駆け足で恋の階段を昇ろうとする彼に、待ったをかける。
「ゴメン!本当にゴメンっ!!お願いだから、ちょっと待って」
突然唇が離れたことに憮然とする慎司に、私はひたすら謝った。
「……先に、シャワーを浴びてもいい?」
「え?別に俺は気にしないけど」
私が気にする。気にさせてください!
「ほら、女子にはいろいろと心と体の準備というものが……」
ごにょごにょと自分でも苦しいと思う言い訳を続ける。
「わかった。ここまで待ったんだから、あと十分くらいは我慢してやる」
慎司は申し訳なさに縮こまる私の頭をぐしゃぐしゃっとかき混ぜ肩をすくめてから、片方だけ口角をあげて意地悪そうに笑う。
「なんだったら、一緒に入るか」
「……ゴメン。それも無理」
私の一方的なわがままにより、甘い時間はあと少し先に延ばされた。