副社長とふたり暮らし=愛育される日々
しかも、お兄ちゃんが帰ってきたということは、この同居生活も終わるということだ。こんなに中途半端なところで、終わらせていいの……?

瞬時にそんな考えが駆け巡り、お兄ちゃんが何か言っているけれど耳に入らない。黙っていると、突然手からスマホがするりと抜ける感覚で我に返った。

あっ、と思った時には、スマホは副社長の手に渡っていて……。


「千紘か? 御影だ」


なんと、彼はそんな言葉を放っていたのだ。

“千紘か?”って……なんで? まさか副社長、お兄ちゃんのことを知ってるの!?

予想外の展開続きで、もう唖然とするしかない私。漏れ聞こえてくるお兄ちゃんの声も、私と同様困惑している。


『え……さ、朔也さん!? なんで……』

「今、瑞香は俺の家にいるんだ。悪いが、彼女を帰すつもりはない」


ふたりが知り合いらしきことには驚愕だけど、今のひと言も聞き捨てならない。

何を言い出すのかと、私はさらに大きく目を見開いて詰め寄る。


「ふ、副社長っ!?」

『何言ってんすか!? ちょ……と、とりあえずそっち行きますから! 絶対瑞香に手出さないでくださいよ!』


焦った様子で叫ぶお兄ちゃんの声は、聞き耳を立てなくてもよく聞こえた。

すぐに通話は切れ、私はぽかんと目と口を開いたまま副社長を見やる。

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