副社長とふたり暮らし=愛育される日々
わざと信じているフリをしていたけど、それはお兄ちゃんも承知していると思っていた。なのに、まさか本気にしていたとは!

わが兄ながら呆れてものも言えず、頭を抱えてうなだれる。そんな私を見て、副社長はクスクスと笑っていた。


「最初は俺も本気か?って思ったんだけど。瑞香って名前を聞いて、りらのことだとわかったら気が変わったんだ。きっとひとりきりで寂しがってるって言うし、素のお前と話してみたかったし、協力してやってもいいかって」


彼が穏やかな口調で話すのを聞いていると、クリスマスの情景が蘇ってくる。

あの日、変な格好をしてやってきて、『サンタクロース信じてないじゃないか』と笑っていたっけ。

あれはお兄ちゃんに頼まれたからだったのだと思うと、ちょっぴりおかしくて、心がほっこりした。

 
「しずく堂のケーキを買ってきてくれたのも、お兄ちゃんから聞いたんですね?」

「そう。昔から誕生日はあそこのケーキで祝ってたんだろ」


その謎も解け、私は口元をほころばせて頷いた。そんなことを頼んでいたなんて、妹想いの兄だなと嬉しくなりながら。

でも、そうまでしてでも、お兄ちゃんには帰ってこられない理由があったんだよね?

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