副社長とふたり暮らし=愛育される日々
まぁ、今こうやって帰ってきてくれたから、それだけで大目に見てあげようという気になるんだけど。


「……とりあえず、事情はわかったよ。本当にその友達がお金返してくれるかは謎だけど、とにかくお兄ちゃんが無事でよかった」


私も甘いなぁと苦笑を漏らして言うと、お兄ちゃんはじーんときているような表情で、「瑞香……」と呟いた。

けれど、納得いかないことはまだある。


「でも、どうして海外出張だなんて嘘ついて、全然帰ってこなかったの? 借金の件は言えなかったとしても、家を出なくたってよかったのに」


口を尖らせて不満げに言うと、お兄ちゃんは一瞬ギクリとしたように見えた。そして、私から目を逸らし、何かを我慢するようにぐっと拳を握る。

深刻そうな顔になって、「それが……」と口を開く彼を、私は怪訝な目でじっと見つめる。


「実は、かけ持ちで働き始めたとこが……バーで……」

「え? 聞こえない」


徐々に俯き、もごもごと口ごもるものだから、私はテーブルに身を乗り出すようにしてお兄ちゃんに耳を近づける。

すると、彼は何かを振り切るようにバッと顔を上げ、今度はひと思いに言い放った。


「働き始めたとこが女装バーで! 俺のことを気に入ったニューハーフにつきまとわれてたんだよ……!」

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