副社長とふたり暮らし=愛育される日々
「何度も辞めようと思ったんだけど、すげぇ時給よかったから結局ズルズルと……。あ、でも誤解するなよ、俺はストレートだからな!」


真剣に私に言い聞かせる彼に、ぎこちなく笑いながら頷いた。

これで実はお兄ちゃんもそっちの趣向が……なんて話になったら、衝撃が大きすぎて私の頭はショートしてしまう。

彼の身に起きたらしいことはなんとか受け止め、気になることを聞いておく。


「その、お兄ちゃんのことを気に入っちゃったニューハーフさんは大丈夫なの?」

「あぁ。俺が北海道行ってる間にほかの相手を見つけたらしくて、呆気なく離れていったよ。まったく、一年もつきまとってたのはなんだったんだ。人がどんだけ苦労したと思って……」


腕を組んで、ぶつぶつ言いながら怒っているお兄ちゃんに苦笑しつつ、「とりあえずよかったね」と返した。

どんなふうにつきまとわれていたのかは、聞くのが怖いから掘り起こさないでおこうと心に決めて。

ようやくコーヒーに口をつけたお兄ちゃんは、ひとつ息を吐き出して、すっきりとした表情を見せる。


「俺の話はこれで全部だ。もう隠し事は何もない。ということで聞くけど……」


彼の顔はすぐに強張り、私と副社長を交互に見ながら、若干緊張感が漂う声色で問いかける。

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