副社長とふたり暮らし=愛育される日々
三時間ほどで終了した会議は、沈丁花も一応候補には入れておいてもらえたけれど、話が進んだのはライラックの香りをアレンジしたものだった。
りらだからライラック、というのは王道と言うか、それはそれでいいのだけど……正直、私の中ではやっぱり納得いかない部分もある。
柴田さんが言うように、コストの問題をなんとかすれば、もしかしたら実現できるかもしれないのに、最初から“諦めろ”と言われているような気がして。
でも、これはチームで協力しなければいけないこと。私だけがやりたいと言って、できるものではないのだ。
帰る前に化粧室に寄り、鏡に映る自分と目を合わせながら、そう言い聞かせていた。そして、乾いた唇にリップクリームを塗ろうとしたものの……。
「あれ? ない……」
すぐ取り出せるように、いつもバッグの内ポケットに忍ばせているのだけど見当たらない。記憶を辿ってみれば、会議の最中に使ったのが最後だ。
ミーティングルームに落としてきちゃったかな。まだ同じ階にいるし、取りに行くか。
ひとつ息を吐いて、再びミーティングルームに向かう。すると、ドアが少し開いていて、まだ中に誰かがいるのがわかる。
鍵を閉められていなくてよかった、と思いつつドアノブに手をかけようとした、その時。
「男の人って、りらさんに甘いですよねー」
中からそんな言葉が聞こえてきて、私は思わず動きを止めた。