副社長とふたり暮らし=愛育される日々
すっかり仕事モードになっている朔也さんを、私はまっすぐ見つめて耳を傾けていた。


「お前も、もっとわがままでいいんだ。プロデュースってのは、起用された本人が納得いくまで、何度も何度も試作を繰り返す。企画の段階でそれを遠慮してたら、いい商品なんてできっこない」


そこでふと思い浮かぶのは、文句を言っていた唐木さんの姿。彼女だけじゃなく、迷惑だと思っている人はほかにもいるかもしれない。


「でも、それを嫌がる人も中にはいるかもしれません。私がわがままを言うことで、どんどん皆の空気が悪くなったら……」


正直に不安を吐き出すと、朔也さんはわずかに笑い、「文句を言うやつはどこにでもいる」と、あっさり言い切った。


「これまでの会議でも、意見が対立して火花散らしてたことなんてしょっちゅうあったよ。でも、商品が完成すると、そういう苦労は全部水に流されるんだ」


懐かしそうな目をして話す彼は、私を少しずつ安心させて、考えを変えさせてくれる。

ひとつの商品を生み出す際には、様々な意見が出される。それが簡単にまとまることはないだろうし、当然文句も出るだろう。

皆はいつもシビアな世界で戦っているんだ。私だけが怖じけづいている場合じゃない。

いい商品を作りたい──その想いは、きっと皆同じなのだから、いつか団結できるはず。

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