副社長とふたり暮らし=愛育される日々
その香りを嗅いだ彼らは、「やっぱりそうだよね」と頷いた。

同じように香りを確かめた唐木さんは、ぎこちない笑いを口元にだけ浮かべ、私に若干イラついたような声を投げてくる。


「だから、難しいんだって前回も──」

「私は、皆さんとなら、これを超えた商品を作れると思ってます」


彼女の言葉を遮り、力強く言い切った。唐木さんも、ほかの皆も目を丸くする。


「Mimiの金木犀の香水を初めて嗅いだ時、本物の花みたいでびっくりしたんですよ。芳香剤っぽくならずに、ここまで再現できるのはすごいなって」


まだモデルになる前、Mimiの存在を知るきっかけになった香水を思い出しながら言った。

私は姿勢を正し、黙って耳を傾けてくれている皆に、真摯に頼み込む。


「素敵な香水をたくさん生み出してきた皆さんだから、無理を承知でお願いします。どうかもう一度、企画を練り直していただけないでしょうか」


祈るような想いで、「お願いします」と頭を下げると、誰かが深く息を吐き出した。


「……私たちを挑発してるの? いい根性してるわね、あなた」


コトリ、とテーブルに香水を置き、感情を読み取れない声を発するのは三嶋さんだ。

< 171 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop