副社長とふたり暮らし=愛育される日々
怒らせてしまった……?とギクリとする。失敗に終わったかもしれないと諦めかけて、恐る恐る顔を上げようとした、その時。


「そこまで言うならやってやろうじゃない」


…………え?

意外なひと言が聞こえてきて、一気にぱっと顔を上げると、腕を組む三嶋さんが目に映る。


「前回も言ったコストの件もあるし、揮発性が高い沈丁花の香りをどれだけ持続させられるかっていう課題もある。問題は山積みだけど、まぁ難しいからこそやりがいはあるわね」

「三嶋さん……」


クールな表情のまま淡々と話す彼女をぽかんと見ていると、柴田さんがふっと笑みをこぼす。


「ライバルの商品見せられたら、対抗したくなってくるよなぁ。我らが三嶋嬢も負けず嫌いだし」


茶化す彼を冷ややかな瞳で一瞥した三嶋さんだけれど、私に目線を戻すと口元を緩め、わずかに口角を上げた。


「私たちで、ほかにはないものを作りましょうか。りらさんだけの、特別な香水を」


ふたりの言葉にほかのメンバーも頷き、場の雰囲気が明るくなるのがわかった。唐木さんはいまいち不服そうだけど。

でも、認めてもらえたんだ……。そう実感すると、胸の奥から感動が湧き上がってくる。

私は堪えきれない笑顔を見せ、「ありがとうございます! お願いします!」と深く頭を下げた。


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