副社長とふたり暮らし=愛育される日々
そう決めて、検索し始めて三十分ほど経った時だった。さっき見た名前が、勝手に表示されたのは。


「ふ、く社長……!?」


なんで? なんで副社長から電話がかかってきているの?

動揺してスマホを落としそうになる。とにかくざわめく胸を抑えようと、ひとつ息を吐いて、ボタンをタップした。


「も、もしもし」

『今朝ぶりだな、瑞香。今家にいるのか?』


いつもと変わらない落ち着いた声で問いかけられ、どうしたんだろうと思いながらも「はい、そうですけど」と答えた。

すると、彼は驚くべきことを言い放つ。


『もう一度、着替えや必要なもの用意しておけ。今から迎えに行く』

「…………えぇっ!?」


すっとんきょうな声を上げると、すぐにプツッという音がして通話終了。私はスマホを耳にあてたまま硬直する。

き、切られてしまった。ていうか今、“迎えに行く”って言ってた? まさか、また副社長のマンションに……!?

いやでも、一瞬だったから聞き間違えたのかな?

そうだ、きっと空耳だったに違いない。だって、彼は私の事情を知らないはずだもの。

今のは白昼夢か。やばい、私病院行かなきゃ。いや、その前に家電を……!


軽くパニックに陥るも、今しなければいけないのは検索だ!と思い直し、再びネットを開く。

……しかし、三十分ほどして、彼は本当に現れた。

< 77 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop