副社長とふたり暮らし＝愛育される日々
「俺が彼女にうつつを抜かして仕事を疎かにするとでも？　ありえない」


あぁ、そういう意味で忠告したのか、と理解しつつ、完全否定されてチクリと胸に何かが刺さったような感覚を覚えた。

副社長が私に夢中になるなんてことはありえない。彼は当然のことを言ったまでなのに、なんだろう、今の痛みは。

気のせい？と首をかしげて胸に手をあてていると、副社長は足を組んで窓の外に目を向けながら言う。


「今までそんなことがあったか？」

「ないから逆に心配しているんです。副社長が自分のマンションに女性を住まわせるなんて初めてのことですから、何か大きな心境の変化でもあったんじゃないかと」


……そうなんだ。ほかの女性は、彼と一緒に住んだことはないんだ。私が初めてなんだ……。

明智さんの言葉を聞いて、ほっとしたようなドキドキするような、複雑な感覚になる。さっきから、私の胸はなんだか騒がしい。

さらに騒がせたのは、副社長の余裕たっぷりな次のひと言。


「安心しろ。仕事はもちろん、猫の世話も怠らない」


思わず隣を振り向くと、窓枠に肘をつく彼は、私に流し目を向けて意味深な笑みを見せた。

また人を猫扱いして……と呆れつつも、私のこともちゃんとかまってくれるという意味だと解釈すると、正直嬉しくて。猫扱いも捨てたもんじゃないかも……なんて思う。

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