副社長とふたり暮らし=愛育される日々

ふくろうから斜め向かいの通りに見える七階建てのビルの、二階から上にユーフォリックモードのオフィスが入っている。そこから少し離れたところで停めてもらい、ふたりにお礼を言って車を降りた。

『またあとで。なるべく早めに帰る』

最後に副社長に言われたそのひと言が、くすぐったくて、でも温かくて。一日頑張ればまた会える人がいると思うと、今日の仕事もいつも以上にやる気が出る。

彼の姿を頭の隅に置いて、調理台の上に並べたお弁当の容器に手際良くおかずを入れていると。

私とは別のおかずを詰めるおばちゃんが何気なく言った、「そういえば、最近ジェントル来ないわよね」というひと言をきっかけに、皆が口々に話し始めた。


「そりゃそうでしょ。私たちは三が日しか休みじゃないけど、世間では正月休みだったんだから」

「あっははは、そっか! 彼女ができたのかと思ってたわ」

「え、いなかったの? あんなにイケメンで仕事もできそうなのに?」


そこで一瞬手を止めたおばちゃんたちは、「いるわ~いるいる」と声を揃えて笑い合う。そのやりとりがおかしくて私もクスクス笑っていると、店長の奥さんがこんなことを言う。


「でもあの人、男にもモテそうじゃない? きっと引く手数多よ」


……男にもモテる。副社長もそういうタイプかなぁ、となんとなく考えていると、今朝のことがリンクしたように感じてはっとした。

< 88 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop