王様男と冷血男の間で
キングからの招待
その日、円は結局真蔵とは出掛けなかった。

麻耶を呼び出し、昼はショッピングをして
夜はキングのいるクラブに出掛けた。

「どうしたの?
明日は婚約者のお宅でパーティーなんでしょ?

前日に遊び歩いて大丈夫?

明日、肌とか荒れちゃうんじゃ…」

「別にどうでもいい。

プレゼントも着る服も決まってるし
パーティーは夕方からだから。

それに挨拶してすぐ帰るつもりだから。」

円は真蔵が怖かった。

そばにいると真蔵に本気になってしまいそうで
傷つけられそうで
男に免疫のない円はこの状況をなかなか受け入れることができない。

「うわっ!キングが来た!」

麻耶がキングを見つけて
円は身を乗り出した。

キングは円を見つけて手を振っている。

「何か…呼んでない?円のこと…」

「え?そうかな?」

円がキングの方を見ると、明らかに"おいで"というジェスチャーに思える。

「思うんだけど…キングって、円のこと随分気にしてるよね?

まさかとは思ったけど…もしかして脈ありかも?」

麻耶に言われてみると確かにそんな気になった。

なかなか座ることの出来ない隣の席に簡単に座らせてくれたり、
踊るときに誘ってくれたり、
2人っきりで会う約束を交わしたり
円を探してキングの方から円の所に来てくれたこともある。

円は呼ばれているのならと
恐る恐るキングの席に行ってみた。

「マドカ!よく来たな。」

キングは円を隣に座らせた。

部屋の外で待ってる女の子たちは
円を敵対視している。

「またあの女?

一体何者なの?」

様々な声は、ほとんどが円を中傷するものだった。

「この前はごめん。

今日なら時間取れるけど…

二人でここを出て、何処か行かないか?」

「え?」

円は信じられなかった。

しかし憧れのキングからの誘いなのに
それほど気乗りしない。

「一夜だけの恋人に立候補しても?」

だけどキングほどの男からそう言われると
冒険してみたい気もしてくる。

何しろあのキングだ。

カッコよくてみんなが憧れてるあのキングだ。

それでも少し迷っていた円だったが
昨夜の真蔵を思い出した。

真蔵には他に好きな人がいる。

未だに忘れられない昔の恋人だ。

そう思うと悔しくて悲しくて円は自分もキングと思い出を作ろうと思った。

「わかった。じゃあ、お願いします。」

キングは円の肩を抱いて部屋を出た。

女の子たちの悲鳴と落胆の母が聞こえる。

「キング、あの子をお持ち帰りするつもりなの?」

「えー!?ウソォ〜?なんであの子なの?」

麻耶は信じられなかったが黙って円を見送った。

(まぁ、免疫も大事よね。

それにしても…真蔵さんと何かあったのかなぁ。)

麻耶は頭の中でそんなことを考えていた。

円はクラブを出ると、キングと手を繋いで街の中を暫く歩いた。

「どこ行くの?」

「ま、ついて来て。

食事はした?」

「うん。軽く食べて来たから。」

「じゃあまずは酒でも飲もう。」

みんながキングを見て振り返る。

「あれ、キングじゃない?」

「隣のコ、誰?」

様々な声が聞こえて円は動揺する。

まるで人気アイドルと歩いてる気分だった。

そして円はキングに連れられて
ある建物の中に連れて行かれた。









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