王様男と冷血男の間で
今夜、そのベールが暴かれて…⁉︎
キングに連れられて入ったのは
この辺りでは知らない人が居ないくらい有名な高級マンションだった。

「ここ?」

「うん、俺の家。」

生活感のないその部屋はモノトーンを基調にした冷たい感じのする部屋だった。

「そこ座って。」

部屋を見回すとほとんど使ってないように見える。

キッチンも綺麗なままだし、
チラッと見た冷蔵庫の中は飲み物しか入ってなかった。

しばらくするとケータリングがやって来て
2人で食事をした。

「さて、じゃあ酒でも飲もうか?」

キングは部屋の中でもサングラスを取らないし、帽子を深くかぶったままだ。

「あの、どうしてサングラス取らないの?

部屋の中まで…

もしかして見られちゃいけない顔?」

「うん、見られたら困る。…って言うか見たらマドカが困るだろうと思って…」

「私が?」

「うん、マドカが…それでもいいなら外してもいいよ。」

キングが円に近寄って顔を近づける。

「どうする?

俺の顔を知ったらここから逃げ出せないけど…」

円は少し戸惑ったが
どうしてもキングの素顔を知りたかった。

そして恐る恐るキングの帽子を取った。

パサリと黒い前髪がキングの顔にかかった。

そして円はその真っ黒なサングラスに手をかけた。

「本当に後悔しない?」

キングに言われて少し躊躇うが
円の手はキングのサングラスの縁を捕らえた。

「外しても?」

「どうぞ。」

外した瞬間、キングにキスされてその顔を見る暇もなかった。

円は自然に瞳を閉じていた。

そして長いキスが終わり
瞼をゆっくりと上げるとそこに居たのは紛れもなくあの真蔵だった。

「え?…し、真蔵さん?」

「婚約者がいるのに他の男にこんなに気を許すなんてな?」

円は何が何だかわからなくて返す言葉も出ない。

「ど、どうしてここに?」

「お前は俺の裏の顔を知った。

俺から逃げられると思うなよ?

それから、俺とは知らないで別の男と浮気しようとした事を忘れるな。」

「う、浮気じゃないでしょ?

キスしたのは他の誰でもなくて婚約者のアンタなんだから。」

「俺だって知らなかったんだから浮気と一緒だろ?

覚悟しておけよ。」

そう言うと真蔵は派手な服を脱ぎ出した。

「ちょっ、ちょっと!

ふ、服なんか脱いで…な、何するつもり?」

「お前は欲求不満なのか?」

真蔵はクローゼットを開けるといつものスーツに着替え始めた。

「着替えるだけだ。
こんな服じゃ家には帰れないからな。」

円はホッと胸を撫で下ろした。

しかし安心したのも束の間、
真蔵は円を壁に追い詰め両腕で逃げ道を塞ぐと円の耳元に顔を近づけた。

円は真蔵が近づくたびにドキドキする。

真蔵はそんな円を弄んでいるかのように
円の耳に唇が触れるほど近づいてこう言った。

「このことは誰にも話すな。

さもないとお前が浮気したって
ご両親に話して破談にするからな。

そしたらお前のお父さんの会社はどうなるかな?」

「う、浮気じゃないってば!」

「浮気だろ?」

そう言うと意地悪そうな笑みを浮かべ
円から離れた。

「送ってやる。」

そう言って円の手首を掴み、部屋を後にした。

キングの正体が真蔵だったと知っても
円はまだそれを現実として受け止められなかった。




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