王様男と冷血男の間で
キングと真蔵
真蔵との帰り道、円は何も聞くことが出来なかった。

真蔵がどうしてキングなのか…
キングになって夜な夜なクラブで遊んでるのは何のためなのか…

確かにすごく似ているとは思ってたが
あの堅物の真蔵が実は夜の帝王だとは夢にも思わなかった。

そして確かに円はキングとキスしたのだ。

油断したとは言え、
キスしたキングを突き放しもしないで受け入れた。

(やっぱり浮気といえば浮気なのかな?)

そんなことを考え首を横に振る。

(ち、違う!浮気じゃない!
本当に好きなのは真蔵じゃなくてキングだし…

ん?でもキングは真蔵で…真蔵がキングだし…)

頭が混乱してまた首を横に振る。

(でも…婚約を解消されたらパパの会社はどうなるのかな?

真蔵のお爺さんは怒るよね。

しかも浮気なんて言われたら…

でも…キングは真蔵なのに…浮気なのかな?

あー、全然わかんない!)

さらにまた首を横に振っていると
それを見た真蔵は円の頭を大きな手で抑えた。

「な、何するの?」

「さっきから頭をブンブン振ってるから気が散る。」

円の顔も見ずに冷たい顔でそう言う真蔵に円は不安になる。

「怒ってる?」

「は?」

「キスしたこと。」

「怒ってないが…お前はそういう女だと思ってなかった。」

「ショック受けたとか?」

しばらく沈黙があって、
真蔵は円のほっぺたをつねった。

「痛っ!

ちょっと、何するの?」

円は真蔵の手を掴んでつねられた頰を撫で怒っている。

「誰がショックなんて受けるか!

妻になる女が浮気性なのは嫌だと思っただけだ。」

「じ、じゃあ…本当に破談に?」

「それはこれからのお前の態度で決める。」

「私はどうすれば?」

「とりあえず俺に歯向かうな!」

「…うん。」

やけに素直な円に真蔵は少しビックリしているが
まぁ、これも悪くないと思ってつい口角が上がりそうになる。

「明日は夕方の4時頃迎えに来る。

それまでに支度しておけ。」

「わかった。」

家の前に着くと真蔵はタクシーを降りて
円を門の前まで送った。

「家に寄ってく?」

「いや、今日は遅いから帰る。

じゃあ、明日な。」

「ありがとう。わざわざ送ってくれて…」

お礼を言われると真蔵は不思議な気分になった。

「何だかお前らしくないな。」

「どういう意味よ?」

また反抗的な態度をとろうとしていたが
円は真蔵に破談にされることを思い出し
また大人しくなった。

「…とにかく…おやすみなさい。」

真蔵は円の心の中が手に取るようにわかった。

そして円にまた意地悪したくなる。

「また浮気しないように釘を刺しておかないとな。」

「え?」

円が気を許した瞬間、真蔵が円の唇を奪う。

円は抵抗しようとしたが
真蔵に腕を掴まれて身動き取れなくなった。

そしてそんな真蔵の行動がまた円の胸をときめかせた。









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