王様男と冷血男の間で
いざ、バースデーパーティーへ!
次の日、円は朝から落ち着かなかった。

夕方から真蔵の父親の誕生日パーティーに招かれている。

真蔵の顔を潰すことの無いよう
慎重を期して行動しなければならない。

それでなくても破談の危機だ。

(真蔵はどんなカッコで来るんだろう?
まさかキングみたいなカッコ…なわけ無いよね。
家族には秘密なんだから。)

ふとその時、円は思った。

(待って…秘密を握られてるのは私だけじゃないじゃない!
私も真蔵の弱味を握ったんだ!

何もアイツの言いなりになんかならなくったって良いんじゃない!)

突然、そう気付いた円は気が大きくなった。

夕方、真蔵が迎えに行くと
円は昨日とは全く違った態度でやけに偉そうだった。

「お前、自分の立場をわかってんのか?」

「は?アンタも自分の立場をわかってないみたいね。」

かなり強気に出る円を見て、真蔵は不思議そうな顔をした。

「俺の立場って?」

「私と破談にするって脅すなら
アンタが夜、何してるか家族にバラすから。」

ドヤ顔で偉そうに言う円だったが
真蔵はそんなに甘い男ではない。

「お前、バカか?」

「え?」

「バラしたきゃバラせばいい。

俺は家を追い出され、
お前とはどっちにしても破談になる。

俺は浮気者のお前と結婚しなくて済むし、
あの家にいるのも楽じゃないからそうしてくれた方が気が楽だが…

お前のために秘密にしてるってわかってないんだな。」

円は一瞬にして血の気が引いて行く気がした。

「ご、ごめん!そうだったんだ。
真蔵は私のために…」

簡単に騙される円をまた可愛いと思いながら
真蔵はフッと笑顔になる。

「だからお前は俺の言うこと聞くんだぞ。」

「う、うん。」

「"うん"じゃなくて、"はい"だろ?」

「はい…」

少しだけ頰を膨らましてささやかに抵抗する円は
今の真蔵にとってホッとできる唯一の存在である。

「今日は頼むな。
うまく親父の機嫌をとってくれよ。」

「はい、はい。わかってます。」」

そしてあっという間にパーティー会場についた。

円は真蔵にエスコートされて将来の義父に挨拶をした。

「お義父さま、お誕生日おめでとうございます。」

いつもは厳しく冷たい父の顔が
円の顔を見て綻んだ。

「円さん、よく来てくれたね。

真蔵はどうだ?優しくしてくれるか?

コイツはどうも冷たい感じがして難しいヤツだと思うがよろしく頼むな。」

「お義父さま、真蔵さんはとても優しくしてくれます。
だからご心配には及びません。」

円は父の前で真蔵をたて
父親は上機嫌になる。

「真蔵、円さんが楽しく過ごせるように気遣ってやれよ。」

「はい。」

円も真蔵と父親が笑顔で会話してるのを見ると嬉しくなった。

「真蔵くん。」

その時だった。

真蔵を呼ぶ声がして振り向くと
真蔵と同じ年くらいの綺麗な女が懐かしそうに真蔵を見つめていた。

円はその存在に胸騒ぎがして、突然不安に陥った。




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