王様男と冷血男の間で
元カノ登場!
自分を呼び止めた声に振り向いて
真蔵はその相手を信じられないような顔で見ている。

その顔を見た円はその相手が誰なのか気になった。

「ゆ、柚月…」

「久しぶりね、真蔵くん。」

「どうしてここに…?」

「先週、ニューヨークから戻ったの。」

謙蔵からも愛されていた柚月は
真蔵を選んでしまったことで謙蔵が道を外れてしまった事に責任を感じていた。

真蔵と付き合いながらも、常に謙蔵を心配していた。

しかし、そんな風にお節介をやいていた柚月は
謙蔵の彼女と間違えられ
知らない男たちに謙蔵の前で酷い仕打ちを受けた。

それが原因で真蔵とはギクシャクしてしまい、
真蔵の顔を見るのが辛いと泣いた。

柚月の両親は事件のことを知り、
真蔵の家とは絶縁し、
家族でニューヨークに渡った。

しかし、真蔵は柚月を諦めきれず
ニューヨークまで逢いに行った。

柚月は真蔵の顔を見るのも嫌だと言って追い返し
真蔵はかなりのショックを受けた。

その直後、謙蔵が事故に遭いこの世を去った。

それ以降、真蔵は誰かを愛することも信じることも拒んで生きてきた。

「逢いたかったわ。」

その言葉は今の真蔵には辛いだけだった。

「何しに来たんだ?
俺の顔、見るのも嫌だって言ってたのに…」

「叔父様のバースデーをお祝いに来たのよ。

日本にいる時は毎年出てたじゃない。」

「それでもここはお前の来る場所じゃないだろ?

ウチのせいでお前がどんな思いをしたか忘れたのか?」

「真蔵くん、雰囲気変わったね。」

「そりゃそうだろ?
あれから何年経ったと思ってるんだ。

俺はもう昔の俺とは違う。」

円は2人の会話を聞いて不安になる。
2人の間には円が知らない重大な秘密があるように思えた。

そんな円に真蔵が気付いた。

「円、紹介するよ。

幼馴染の柚月だ。」

円は戸惑いながら柚月に頭をさげた。

「柚月、婚約者の円だ。」

「婚約者?」

「あぁ。可愛いだろ?まだ20歳になったばかりだ。

なぜか酒は強いけどな。」

円の髪を撫で、真蔵が円を紹介すると
柚月は途端に元気がなくなった。

「初めまして。」

柚月は円を見て頭を下げた。

「じゃあな。」

真蔵が円の手を取って柚月から離れた。

円は真蔵に引きずられるように手を引かれて
会場の庭に出た。

「痛いんだけど…」

「あ、悪い。」

真蔵が円の手を離し、空を見上げている。

「あの…さ。あの人ってもしかして…」

「え?」

「あの柚月って人…元カノ?」

真蔵は怒ったような顔で円をにらみつける。

「た、ただ…ちょっと様子がおかしかったから…
き、気になって…」

「気になる?」

円が頷くと真蔵が不思議そうな顔で円を見た。

「何でお前が気になるんだよ?」

「え?あー…だって結婚相手の女性問題は後々知るより結婚する前に把握してしておかないと…」

顔を真っ赤にして言う円を見て
真蔵は今の不快な気持ちがどこかに消えていく気がした。

「お前、俺が好きだろ?」

「え?…
えーっ?バッカじゃないの?
どうしたらそんな風に思えるのかな?」

真っ赤な顔で全力で否定する円に真蔵は思わず吹き出して笑ってしまう。

「好きだって言ったら浮気したこと許してやるよ。」

「え?は、破談にしないってこと?」

「おう。お前と結婚してやるよ。」

「してやるって…全く何様なの?

いい?私はパパの会社のために泣く泣くアンタと結婚してやるんだから。」

「じゃあ、しなくてもいいんだな?」

「や、そういうんじゃなくて…」

「じゃ、好きだって言ってみろよ。」

「えー?仕方ないなぁ。
パパのために言ってやるんだからね。

…す、好き…」

「聞こえねーなー。」

「好きだってば!」

2人が庭でじゃれ合う様子を遠くから柚月は見ていた。

(真蔵くん…私のこと本当に忘れちゃったの?
私は真蔵くんに逢いたくて戻って来たのに…)

それでも柚月は真蔵がまた自分のところに戻ってくると信じていた。








< 23 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop