王様男と冷血男の間で
浮気発覚⁈
それからというもの真蔵の前に柚月が幾度も現れた。

仕事の帰りを待ち伏せしたり、
夜に家まで来たりした。

真蔵の両親も謙蔵のせいで柚月を深く傷つけてしまったので
柚月には腫れ物に触るように接した。

真蔵も柚月の顔を見るのは辛かったが
だからといって柚月に冷たくできない。

しかしこのままで良いという訳ではない。

柚月に現実を知ってもらいたかった。

そして柚月と話をするために柚月を呼び出した。

「話って何?」

柚月は相変わらず綺麗だった。

この長い睫毛を伏せるたびに真蔵は何度もドキドキさせられた。

憧れて死ぬほど恋い焦がれた柚月が
目の前にいると思うとつい手を差し伸べたくなる。

それでも真蔵が今、好きなのは円だ。

気が強くて、恥ずかしがり屋で、反抗的で、素直じゃなくて…柚月と正反対のような円だった。

「柚月…俺に逢いに来てるってご両親は知ってるのか?」

柚月は首を横に振った。

「あの時…あんな事があって…
ホントに辛かったけど…
やっぱり…私には真蔵くんしか居なくて…

何度忘れようとしても…最後は真蔵くんじゃなきゃって思った。

もう離れたくないの。」

真蔵の胸は潰れそうなほど痛かったが
柚月にどんなに残酷だとしてもはっきりと言わなきゃならない事がある。

「もう…遅すぎる。

遅いんだ。

俺はもう…」

真蔵は声を絞り出すように辛そうに話している。

柚月は言われる事をどこかで分かっているかのように
真蔵の話を制した。

「待って、真蔵くん…少しだけ待って。」

コーヒーカップを持つ柚月の手が震えているのを見て

真蔵はそれ以上話せなくなった。

「ごめん。」

その一言で全てを終わらせようとした。

「あの円って人のこと…好きなの?」

真蔵は答えられなかった。

頷けば柚月が悲しむのがわかっていたからだ。

「柚月…お前を見るのは俺の両親も辛いんだ。

謙蔵の事を嫌でも思い出すし…

父も母もお前やお前の両親に悪くて、
お前の顔すらまともに見られないんだ。

俺はそれが分かってたからあの時、お前を諦めるしかないと思った。」

柚月の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちるのを見て
真蔵の胸が更に痛む。

「すまない。

お前もあのとき、俺の顔を見るのも辛いと言ったろ?」

柚月は首を横に振って泣きじゃくる。

「場所変えよう。」

真蔵は柚月の手を引き、
駐車場に向かって歩いた。

「あの人キングに似てない?」

偶然にも道の反対側を歩いていた麻耶が隣にいる円に言った。

円は麻耶の指刺す方を見て衝撃を受けた。

「し、真蔵…」

「心臓?心臓がどうかしたの?苦しいの?」

円はその光景を見て固まっている。

「円?大丈夫?」

円の目には二人が手を繋いで歩いているようにも
真蔵が柚月を連れ去ろうとしてるようにも見える。

円はスマートフォンを急いで取り出し
真蔵に電話する。

真蔵は着信画面を見たが
電話を取らなかった。

「円?どうしかしたの?
もしかしてあの人の事しってるの?

まさか本物のキングとか?」

しばらく円は動けず、麻耶の質問にも答える余裕がなかった。

そして近くに停めてあった真蔵の車に柚月を乗せると
二人は何処かに消えていった。

「円!ねぇ、円ったらぁ、いったいどうしたの?」

円は急に走り出して車を追いかけた。

「円ぁ!ちょっとホントに何があったの?」

麻耶は円を呼び止めたが、
円の耳には届いてないみたいだった。










< 24 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop