王様男と冷血男の間で
新しい恋してみたら?
その日の夕方、気分を切り替えるために円は麻耶に連絡した。

「麻耶、遊びに連れてって。」

「どうしたの?クラブ行くのやめたんじゃ…」

「もう自由なの!ガンガン遊ぶ事にした!」

麻耶は昨日は突然姿を消した円をあれからずっと心配していた。

そして今は何も聞かずに付き合ってあげようと思った。

「何があったか分かんないけど…とりあえず行こうか?」

「うん!」

そして円はまた以前通っていたクラブに顔を出した。

「最近、キング来ないんだよね。」

キングと聞くだけで円の胸はキリキリと痛む。

「キングなんてもう興味ない!

それにあの人多分もう来ないよ。」

麻耶はそんな円を心配そうに見る。

円に何かあったのは一目瞭然だった。

円を心配していた麻耶の前に突然救世主が現れた。

「よう、麻耶!」

「あ、義政!元気してた?」

義政という男は真蔵ほどのカリスマ性は無いが
第二のキングと言われるほどいいオトコだ。

「久しぶりだな?」

義政は円を見て麻耶に言った。

「誰?紹介してよ。」

「あ、友達の円。可愛いでしょ?

円、彼は友達の義政…第二のキングって言われてるのよ。」

「やめてくれよ。俺は俺だってば。

あんなにチャラくないだろ?」

円は義政を見て少しドキッとした。

確かに真蔵に似ている。

でも本人はああ言ってるけど
キングの本当の姿を知ってる円には
真蔵より義政の方がかなりチャラい感じがして思わず笑いそうになる。

「よろしく、円。」

義政は円に握手を求め、円が手を出した瞬間、
その手を引き寄せて手の甲に唇を押し付けた。

「な、何?」

「可愛いな。モロタイプなんだけど…」

「え?」

「一緒に踊らない?」

円と義政に新しい恋の予感がした麻耶は
そんな円を後押しする。

「円、新しい恋してみたら?」

「え?」

円はかなり動揺していたが手を引かれるまま、
義政にフロアに連れて行かれた。

義政はダンスの天才かと思うくらい踊りが上手かった。

キングと同じように女の子の視線を集め
隣にいた円はまた一部の女子から反感を買った。

「あの子、キングの次は義政くんと?
何者なの?大して可愛くもないじゃない。」

円はそんな事も気付かずに義政と楽しそうに踊っていた。

しかし円が化粧室に行くのを見計らって数人の女子が円の跡をつけた。

そして円がトイレに入ると上からバケツの水をかけて来た。

「冷たいっ!ちょっ…何なの?」

円がビックリして声をあげると

「あんた、調子乗ってんじゃないの?
大して可愛くもないくせに!

義政くんから手を引きなさいよ!ブス!」

と言い返して来た。

ずぶ濡れになった円が急いでトイレから出るとそこには誰も居なかった。

鏡を見ると水をかぶったせいで白い服が透けて下着まで見える。

円は化粧室から出るに出られなくなった。

暫くすると心配した麻耶が探しに来た。

円の姿を見てビックリしている。

「ちょっ…と…何があったの?」

「麻耶ぁ…
何で私がこんな目に遭わなきゃならないの?」

円が泣き出して麻耶はすぐ近くにいた義政のところに行った。

「悪いんだけど上着貸してくれない?

円が酷い目に遭って…」

「どういうこと?」

麻耶に連れられて化粧室に行くと
ずぶ濡れで下着まで透けている円を見て
義政は自分の着ていた上着を円にかけた。

「出よう。送るよ。」

円は義政と一緒にクラブを出た。

「こんなカッコで家に帰れない。

どこかで服を乾かさないと…」

「俺んち近くだけど来る?」

円は少し迷ったが、こんな姿を両親に見せたくなかった。

そして仕方なく義政の部屋について行った。
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