王様男と冷血男の間で
会ったばかりの男の部屋は…
義政の部屋はクラブの近くにある
ワンルームの小さな部屋で
ドアを開けると小さなキッチンとパソコンが置けるだけの机とベッドしかない。

「狭くてビックリしたろ?」

「ううん。ごめんね。」

こんな狭い空間で今日あったばかりの男と2人きりになるのは円にとってはかなり勇気のいる事だ。

「どうしたの?上がんなよ。」

「…う、うん。」

少し緊張している円を察して

「大丈夫だよ。襲ったりしないから。」

と義政は笑った。

備え付けのクローゼットから着替えを出して
円に渡した。

「俺の服しか無いけど…とりあえず洗濯してあるから汚なくは無いと思う。

あそこで着替えて。

中から鍵もかかるから安心して。」

その部屋はトイレと一体になったバスルームだった。

「ありがとう。」

円は義政の服を受け取り、中に入って着替えた。

下着まで濡れて居たがさすがに下着は外せなかった。

着替えてバスルームを出ると
義政は円の服を洗濯機で乾燥してくれた。

そしてミルクをレンジで温めて円に渡した。

「お砂糖入れる?」

「ううん。」

「服乾くまで少し時間がかかるけど大丈夫?」

「うん。」

「寒くない?もっと部屋の温度上げる?」」

「大丈夫。ごめんね。迷惑かけて…」

「半分は俺のせいだろ?

多分、円ちゃんにこんな酷い事したのは…
俺みたいないい男と一緒に居たからだろ?」

と言って豪快に笑った。

「円ちゃん、ここ笑うとこなんだけど…」

「本当にそうかも…義政くん、カッコいいから。」

円にカッコいいと言われて義政は少しドキッとする。

「もしかして口説いてる?」

「え?」

「いや、ここも笑って受け流してくれないと…」

円の緊張は義政にも伝わって
義政も急に円を意識してしまう。

「円ちゃんて…案外魔性系かもなぁ。

俺、やられそうなんだけど…」

円は恥ずかしそうに、下を向いた。

「腹減ってない?」

「…ちょっとだけ。」

「パスタでいい?」

確かに義政の小さなキッチンは
たくさんの調味料が並んでいて
ちゃんと使っているみたいだ。

「料理するの?」

「うん。学校は調理師学校だし、
飲食店でバイトもしてるから。

でも料理する時はほとんど飲食店の厨房使わせて貰ってる。

このキッチンじゃ大したもの作れないし…」

「何作ってるの?」

「まだ賄いくらいだけど…案外上手いよ。

俺ね、イタリア料理の店開くのが夢なんだ。

卒業して金貯めたらイタリアに行くんだ。」

義政が目をキラキラ輝かせて夢を語る姿は
円には眩しくて羨ましかった。

「チャラいと思ってたけど…案外しっかりしてるんだね。」

「ひでぇな。」

義政はトマト缶を使ってナスとベーコンで美味しいトマトソースのパスタを作ってくれた。

「嘘みたいに美味しい!」

「嘘みたいって何だよ。」

円は口の右横にトマトソース付けたまま
義政の料理を絶賛している。

義政はそれに気が付き、
円の口の横のトマトソースをキスするように自分の唇で拭う。

円は何が起こったかわからず
ただ固まっていた。

「ごめん、可愛くて。」

義政は新たな恋の予感がしていた。

そして円は急に真蔵の事を思い出した。










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