王様男と冷血男の間で
ライバル出現‼︎
円は目を丸くして口を拭った。

「今のって…キスじゃないよね?」

「うん、トマトソースが付いてたら取ってあげただけ。」

「そ、そうだよね?

これは浮気じゃないよね?」

義政は浮気という言葉を聞いて円に彼氏がいることを知った。

「もしかして好きな奴いるの?」

「え?…ううん…いない。」

円は心臓が飛び出そうなくらいドキドキしている。

少しだけ義政の唇が円の唇に触れた記憶を頭の中から消し去ろうと必死だった。

「だって今、浮気って…」

「さっきまで居たけど…今はもう居ないの。」

義政は言ってる意味がよくわからず首を傾げた。

「さっき別れたってこと?」

「てゆーかべつに付き合ってもないし、
祖父が決めた婚約者と…
破談になっただけで…。」

「そっか。」

義政はそれだけ聞くと、それ以上は何も聞かず
黙ってパスタを食べている。

「服…そろそろかな?」

「いや、もう少し。」

「うん。」

会話が続かなくて円も黙って食べ始めた。


その頃真蔵は家に帰るなり父親の書斎に呼ばれた。

「何ですか?」

父の顔を見る限りいい話では無いとわかっている。

もちろん父からいい話などあるはずはないと真蔵は思っている。

「柚月さんとやり直すのか?」

「え?まさか…どう考えても無理ですよ。」

父親がさっきより更に険しい顔になって真蔵に円のことを告げた。

「さっき、西園寺さんから連絡があった。

結婚はしたくないと…円さんが言ってるそうだ。

てっきり柚月さんとやり直すとお前が言ったのかと思った。」


真蔵はその事を聞いて円に何があったのか心配になった。

円には父の誕生日会で柚月を紹介しただけだと思っている。

柚月と一緒にいる姿を見られて居た事も
円が柚月と電話で話した事も知らない真蔵には
寝耳に水だった。

「円さんと破談にするつもりはありません。

もう一度話してからご報告します。」

真蔵は書斎を出たと同時に円に電話をかけた。

真蔵から着信があったのは円がようやく乾いた服を着ている時だった。

一瞬電話に出るのを躊躇ったが
円は真蔵と柚月が手を繋いで歩くの姿を思い出し、
(実際には繋いでいたんじゃなく、場所を変えるために腕を掴んだのだけど…)
一言言ってやりたい衝動に駆られた。

「もしもし、何の用?」

態度が急に大きくなった円を真蔵は不思議に思った。

「何でそんなに機嫌が悪いんだ?

それにお前から破談てどういう事だよ?」

「もう私になんか構わずに遠慮なく元カノと仲良くしてよね。

アンタと縁が切れてホッとしてるんだから。

もう連絡して来ないで。」

「お前、何があったんだよ?

破談になんて…」

そこまで言いかけた時だった。

「円ちゃん、着替え終わった?」

と義政がドアの向こうから声をかけた。

円は焦ってスマホのマイクを手で抑えた。

「今の誰だよ?男の声だよな?

お前いったい、こんな夜遅くにどこにいる?

着替え終わったってどういう意味だよ?」

「もう関係ないでしょ?」

円はそこで電話を切った。

「円ちゃん?」

「今、着替え終わったから。」

そう言ってドアを開けた。

義政は円に聞いた。

「もしかして誰かと電話中だった?」

「たいした電話じゃないから。」

「そうか、じゃあ家まで送ってくよ。」

「1人で帰れるから大丈夫だよ。」

そういうと義政は円の手を取り指を絡める。

「送ってくよ。
こんな遅くに女の子1人で帰せると思う?」

そういうと手を繋いだままアパートの外へ出て
円の家の前まで送ってくれた。

「ウチ、ここだから。」

「デカイ家。…円はお嬢様なんだね。」

「今日はありがとう。」

「うん、またな。

あ、円…連絡先教えて。」

円は少し躊躇ったが
義政は優しくていい人だったので電話番号を教えた。

「連絡する。また、遊ぼうな。おやすみ。」

義政は繋いでいた手をそこで離した。

その時、門の前から声がした。

「誰だよ?その男?」

円が振り向くと怖い顔をした真蔵が立っていた。

















< 29 / 58 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop