王様男と冷血男の間で
別れたい、別れたくない。
真蔵は柚月を話しがあると呼び出した。

柚月は泊まってるホテルに来て欲しいと言ったが
真蔵はもう円につまらない誤解などして欲しくなかったのでホテルのラウンジで会う事になった。

「真蔵くん、話って何?」

「柚月…俺…もう本当にお前とは逢えない。」

柚月は一瞬、すごく驚いた顔をして、
そして瞼を伏せるとまた涙を流した。

「お前が泣いても…どうにもならない。

俺の気持ちはあの頃とは違うんだ。」

真蔵は中途半端な優しさは捨てることにした。

それが余計に柚月を苦しめるからだ。

「ひどいよ。真蔵くん、あの時…私だけだって言ったじゃない!」

それは柚月がニューヨークに行く前日のことだ。

真蔵は去って行く柚月を引き止めたくて
柚月に逢いに行った。

事件のせいで傷つき、なかなか逢ってくれなかった柚月だったが
ニューヨークに行く前日のほんの短い時間だけ
逢ってくれたのだった。

「真蔵くん、もう私のことは忘れて。

真蔵くんの顔を見るのは辛すぎる。

謙蔵くんの事…思い出しちゃうし…

あんな事があって…真蔵くんは前と同じように私を好きでいられる?」

「俺にはお前だけなんだ。

お前じゃなきゃ…ダメなんだよ。

事件のことはお互い忘れよう。

俺は前と変わらず柚月が好きだから…」

しかしこの時の柚月はとても苦しんでいた。

事件の事で傷つき、そのすぐ後、謙蔵までも失ったのだ。

あのとき、謙蔵を選んでいたらこんな事にはならなかったと何度も後悔していた。

「私、もう真蔵くんには逢わない。

もう、私の事は忘れて欲しいの。」

あの時、柚月は忘れて欲しいと言った。

でも月日が経つにつれ、柚月は真蔵の事を思い出すようになった。

「俺にはお前だけなんだ。」

その言葉がずっと忘れられなかった。

それなのにやっとの思いで逢いに来た真蔵に
すでに他に好きな人がいるなんて考えてもみなかった。

「ひどいわ。あの時の事は嘘だったの?」

「嘘じゃなかったよ。でも…時間が経ちすぎた。

それにお前に会う前から俺には既に婚約者がいたんだ。

それが円だ。

もっとも俺にはお前が居たから円の婚約者は謙蔵になる予定だった。

でもあんな事になって…お前も居なくなって…

20歳の誕生日に祖父から言われて円のことを知った。

円の存在があの時の俺を救ってくれたんだ。

そして今、俺は円を愛してるしあいつも俺を愛してると思ってる。

だから柚月には…もう逢えない。

ひどいと思われても…もう…逢ったりしない。

許してくれないか?」

真蔵が円を愛してると言って
柚月の心は折れそうだった、

それでも柚月には真蔵以外考えられなかった。

そして柚月は真蔵を引き止める為にとんでもなく恐ろしい行動に出た。






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