王様男と冷血男の間で
キングvs義政
いきなり義政に後ろから抱きしめられて
円は動けなくなった。

「返事…決まった?」

円は迷っている。

もう真蔵は居ないのだ。

たとえ目の前でキングの姿をした真蔵が踊っていても
もう他人として見るだけだ。

それでも円は真蔵が居ないからってすぐ義政と付き合う気持ちにはなれなかった。

「と、友達でいない?

それで…もっとお互いのことよく知って…それからでも遅くないんじゃないかな?」

義政にはわかっていた。

「円の心にはまだあの自分勝手な男がいるんだな?

いいよ。友達から始めよう。

でも油断しないで。

イケると思ったら俺は突き進むから。」

その時、キングが円の前にやってきた。

「円、誰だよ?その男…」

「え?キング?どうして?円、知り合いだったの?」

義政は憧れのキングが目の前に現れて動揺している。

しかしその顔をよく見るとどこか見覚えがある。

そして円の家の門の前であった男を思い出した。

「え?まさか…?」

「ちょっと話がある。お前も来い!」

いきなりキングが円の腕を掴んで義政と3人でVIPルームに入った。

「こんなところで何してる?」

「遊びに来た。

真…キングこそ何しに来たの?」

「見ればわかるだろ?踊りに来た。」

「こんなとこで遊んでる場合なの?」

二人のやりとりに義政は呆気にとられていた。

「お前、円をどうするつもりだ?
この前から口説いてるみたいだが…

今の円は平常心じゃないんだ。

だからそこに漬け込もうとするなら俺が許さないからな。」

「平常心じゃないって誰がよっ?」

「お前…俺と破談になって自棄になってるんだろ?」

「バッカじゃないの?」

義政は何が何だかわからないが目の前にいる憧れのキングは
円の元婚約者に瓜二つだ。

「あの…もしかして…円の元婚約者さんですよね?」

「え?」

キングより先に円の方がビックリしていた。

「どうしてわかったの?」

「わかんないのなんてお前くらいだろ?」

と真蔵は身元がバレたのに動じない様子で
円にツッコミを入れる。

「円ちゃんとは破談なんですよね?」

その質問に真蔵が答えるまで時間がかかった。

「……ああ。」

キングのカッコの中の真蔵が答えて円は胸が締め付けられる気分だった。

「だったら俺が円ちゃんを幸せにしますよ。」

義政はますます円に興味を持った。

キングと同じ女の子を好きになることは
義政にとっては憧れの人に近づくような気になるからだ。

それにキングの婚約者だったというだけで
義政の中の円の価値がグンと上がった。

「お前が円を幸せに…か。

やれるもんならやってみろ。」

「俺が円ちゃんと付き合っても後悔しませんよね?」

「円がお前の事を好きになると思うか?」

二人はお互いに挑戦的な態度をとって
円は不機嫌になった。

「私が誰と付き合おうとアンタにはもう関係ないでしょ?」

円はブチ切れてキングに悪態をついた。

義政が笑っていると
今度は義政に円が言った。

「義政くんも勝手に話進めないで!
まだ友達でしょ?」

真蔵は円の言った"まだ"という言葉が引っかかっていた。

いつかは円が義政と恋に落ちてしまう気がして
真蔵は不安になる。

しかし自分にはもう止める資格もなかった。









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