王様男と冷血男の間で
もう離さない
キングと第2のキングと言われる義政が
円を争って睨み合う姿をクラブの誰もが目撃していた。

「円ちゃん、行こう。」

義政が円の手を引いたが
もう片方の手首を掴んだキングが
自分の方へ円の手を引いた。

「離して。」

と円は言ったが2人ともお互いの手を離そうとしなかった。

「円、来い。話がある。」

真蔵がそう言って座り込んだ円を立たせた。

「もうダメだって言ったじゃない。」

泣きそうな円を真蔵が抱きしめる。

キングに魅了された女の子達は溜息をついたり中には悲鳴をあげる子もいた。

「悪かった。俺はもうお前とは離れない。

離れられないんだ。」

義政は片方の円の手を繋いだままその様子を見ていた。

そしてキングの胸に抱かれてる円を見て
円の気持ちがまだキングにあると思い知る。

義政は円と繋いでいた手を離した。

そしてキングは円を連れてクラブから出て行った。

「義政くん、大丈夫?」

周りの女の子たちはフラれた義政の気を引こうと声をかけたが
義政は差し伸べられた手を振り払うようにクラブを出て行った。

「義政、どういうこと?」

麻耶が義政を追いかけて問い詰める。

「あの人が円ちゃんの婚約者だ。」

麻耶はキングが真蔵だったとそのとき初めて知った。

「マジで?

一体どうなってるの?」

「さらっていった…円ちゃんを…」

義政はフラフラと帰って行った。

円は真蔵に手を引かれ夜の街を歩いて行く。

「どこに行くの?」

「とりあえず二人きりになれる場所だ。」

真蔵は躊躇いもせず近くのラブホテルに入って行く。

「え?ここって…ちょっ、何考えてんの?」

「勘違いするな!静かな場所で話しをするだけだ!」

「でも…」

初めて入るラブホテルは円にとってまるでアトラクションだった。

「ヤバっ。何これ?」

「初めてか?…だろうなぁ。」

「あ、アンタはこういうとこしょっちゅう来てるわけ?」

真蔵は意味深な笑いを浮かべて

「どうだろうな。」

と誤魔化した。

「これ、何に使うの?」

「使いかた知りたいか?」

ビックリした円の顔が可愛くて
真蔵は更にからかう。

「教えてやるからおいで。」

「触ったら舌噛むから!」

「ハハハハハハ…舌噛むって?
やるなぁ?」

真蔵は大笑いしてベッドに座った。

「何でベッドに?」

「こっちのが広いだろ?

お前も来い。そこじゃ話しづらい。」

「変な事しないでよ!」

「するかよ。」

円は恐る恐るベッドに腰掛ける。

あまりの心地良さにベッドの上で跳ねる。

「すごい広いね。」

調子乗って跳ねているとバランスを崩して倒れそうになるのを真蔵が支えて
ベッドに二人で倒れて真蔵が円の上に覆いかぶさるような形になった。

間近で見る真蔵の端正な顔に円はときめいた。

「何はしゃいでんだよ?小学生か?」

「なっ…何よっ!」

円が怒ると不意をついて真蔵が円にキスをした。

「え?」

「え?じゃねーよ。

俺はお前と何が何でも結婚する。

だから逃げんな。」

キスがあまりに突然で
急に真剣になった真蔵がカッコよくて
円はコクンと頷くのが精一杯だった。

そして真蔵はもう一度円にキスをした。











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