王様男と冷血男の間で
結婚する覚悟

次の日、真蔵は柚月を連れニューヨークへ旅立った。

柚月は最初は嫌がっていたが

「お前とご両親にちゃんとケジメをつけないといけない。」

と言った真蔵の言葉を
勝手に自分との結婚に向けての話だと思い込んで
ニューヨークに素直に付いて行く気になった。

そんなことを真蔵は予想もしてなかった。

もちろん真蔵の両親は柚月より円と結婚して欲しかった。

祖父同士の約束でもあり、
円の祖父がもうこの世にいないからこそ
約束を守りたかった。

何しろ柚月を見るだけで謙蔵の事を思い出す。

当たり前だが謙蔵の死は
真蔵の両親に深い傷となって今も残っている。

そして真蔵の心にも大きな傷になった。

真蔵が夜な夜なクラブで別人として生きるのは
踊ることが大好きだった謙蔵のその後の人生を見てみたかったからだ。

もし謙蔵が生きていたら
きっとキングのように遊んで
人を惹きつけ楽しく生きたに違いなかった。

自分とは正反対に自由で
友達も沢山いて
みんなに慕われた謙蔵みたいに生きたかった。

円は柚月との関係を清算してくると言って
旅立った真蔵を首を長くして待っていた。

しかし3日で帰ると言った真蔵が
5日経っても帰ってこなくて
円は不安になった。

真蔵は仕事もあるので最長でも1週間で帰って来るはずだったが
真蔵は休暇を延長したらしく帰ってきたのは10日後だった。

「おかえりなさい。」

「うん、いい子にしてたか?」

「それで柚月さんは?ご両親は納得してくれた?」

「まぁな、ご両親にはやっとわかってもらえた。」

真蔵は少し痩せた気がして円は心配になった。

あの柚月を説得するのは大変な事に違いなかった。

「でも…結婚するのは柚月がちゃんと納得した後だ。」

「柚月さんは納得してないんだね。」

「それにお前の両親にも許しをもらわないと…」

真蔵と円には問題が山積みだった。

それでもお互い別れた時よりずっと幸せだった。

そんな時、円の前にニューヨークに居るはずの柚月が現れた。
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