王様男と冷血男の間で
敵わないかも…?
柚月は以前会った時よりかなり痩せていて
何かを思い詰めてるようだった。

「円さん、お願い。

私から真蔵くんを取らないで。」

円は少し怖かった。

「ご、ごめんなさい。」

そして柚月から逃げ、真蔵に連絡した。

「ゆ、柚月さんが来た。」

「え?」

「真蔵くんを取らないでって…私…どうしたら…」

「そこはどこ?」

「ウチの前。」

「今行くから…待ってろ。」

円は冷静になってもう一度戻った。

柚月はまだそこに居て、
思い詰めた顔で立っていた。

「柚月さん、逃げたりしてごめんなさい。

真蔵さんの事だけど…私も諦められない。

だから…ちゃんと真蔵さんと3人で話しませんか?」

「真蔵くんは私を見るのが辛いのよ。

謙蔵くんを思い出すから…

だからあなたに逃げてるの。

私たちすごく愛し合ってたの。

真蔵くんは私をニューヨークまで追いかけて来た。

でも…その頃はまだ真蔵くんを受け入れられなかった。

優しくしてくれる人もいて、その時は私は彼に惹かれたけど…

やっぱり心の中に真蔵くんがいていつまでも消えないの。

忘れようと何度も思ったわ。でも無理なの。

あなたはただのお見合い相手でしょう?

真蔵くんじゃなくても良いはずよ。

お願いだから真蔵くんを返して。」

円は柚月の話を聞いて
柚月が本当に真蔵を愛してる事を知った。

そして自分はこれほど真蔵を思えるのか不安になった。

円は返す言葉を失っていた。

そこに真蔵が現れた。

「円、柚月…」

柚月は真蔵を見るなり駆け寄って抱きついた。

「真蔵くん、お願い、別れるなんて嫌よ。」

「柚月…ご両親にはここに来る事話して来たのか?」

柚月は泣き出して話し合いにはならなかった。

真蔵は柚月をホテルまで送っていくと言って

円は1人家に帰った。

(もしかしたら邪魔者は私なのかもしれないな…)

あまりの柚月の想いの深さに円は揺らいでいた。

その夜、円は真蔵から呼び出された。

「少し会えない?」

円は真蔵に言われた通り大通りまで出て
真蔵の車を見つけた。

「乗って。」

車に乗ると、真蔵は近くの公園の駐車場にクルマを停めシートベルトを外した。

夜の公園の駐車場は誰も居なくて
辺りはシンとしてる。

真蔵は運転席のシートを倒して疲れ切った顔をして深い溜息をついた。

「柚月さんどう?」

「うん。まぁすこし落ち着いたかな。

おじさんに連絡して明日、迎えに来てもらう。

それまで柚月の側にいようと思う。

いまは何をしでかすか分かんないし…

放っておけないからな。

だから…今夜はホテルで2人きりになるけど…

お前は心配するなよ。」

「うん。」

円は不安だった。

柚月に捨て身で来られたら敵わない気がして…

「円?そんな顔するな。」

「うん。」

真蔵は円の気持ちを察して円の頭を撫でる。

そしてシートから身体を起こし
円にキスをした。

円は真蔵の背中に手を回し、ギュッと真蔵に抱きついた。

真蔵はそんな円が愛しくて
円を抱きしめるともう一度キスをした。





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