王様男と冷血男の間で
女が寂しい時、男がその隙を埋めようとする


「どうしたの?クラブ通いは禁止だろ?」

義政は突然現れた円にビックリしている。

「もう結婚とか面倒くさいことやめるから。」

「へぇ。」

義政は強がってる円を見て、
二人の間にまた何かあったと簡単に察する。

「じゃあさ、もっと楽しまなきゃな。

踊りに行こう。」

「え?私はいいよ。」

円はクラブに来ても飲んでるだけで
ほとんど踊らない。

「円ちゃんもさ、クラブに来たならもっと踊らなきゃ。

飲むんだったらバーか居酒屋でいいけど
ここは踊りに来る場所だろ?」

「だって上手く踊れないもん。」

「上手い下手なんて関係ないよ

ただ身体を動かすだけで楽しくなるんだ。

おいでよ。」

義政が円の手を取りフロアに連れて行く。

「こうやって好きに動かせばいい。」

円を後ろから抱きしめて
円の手を取り曲に合わせて身体を動かした。

円はドキッとしたけど次第に義政の取るリズムに合わせて身体が動いて行く。

「な?楽しいだろ?」

「うん。」

いつの間にか笑顔になった円を義政はいつまでも見ていたい気分になった。

「いい雰囲気だよね?」

麻耶が遊び仲間の宗に尋ねる。

「義政、本気みたいだな。」

「え?」

「あの義政があんなに肩入れするなんてな。」

「義政ってどんな人なの?

ここでしか会わないから義政のことよく知らないけど…。」

「俺も麻耶のことよく知らないよ。

ここでしか会ってくれないじゃん?」

そう言って宗は麻耶の手を握る。

「え?あのさ、今は義政の話…」

不意に宗がキスしてきて麻耶はその口を塞がれた。

(まぁ、いいか…悪い人じゃなさそうだし…)

麻耶は宗とのキスに夢中になって
義政と円のことが目に入らなくなった。

「麻耶…2人きりになれるトコに行こう。」

麻耶は少し躊躇ってたけど…
今日も恋人の洸太は病院の宿直で留守だった。

「…うん…ちょっと待ってて。」

麻耶は円と義政の所へ行き

「ごめん、円…先に出る。

義政、円を頼むね。」

と宗の元へ戻って行く。

「麻耶!待って。

まさか宗くんと?」

こんな事は麻耶にとって初めてな事じゃない。

でも宗とは何となく一度だけで終わらない気がした。

「ごめん。」

「洸太くんは?洸太くんと別れるの?」

麻耶は下を向いたままでなにも言わなかった。

「寂しいのはわかるけど…こんなの間違ってるよ。」

「円は?円はどうなの?」

「え?」

「キング…いや、真蔵さんだっけ?

自分だってあの人とちょっと上手くいかないからって
義政と…」

円は麻耶に言われて返す言葉が無くなった。

「そういう事だから。」

そう言って麻耶は宗と出て行った。

「麻耶の気持ちも分かるけどな。

彼氏、放ったらかし過ぎじゃない?」

義政が後ろから円に言った。

「円だって…ホントは寂しいんだろ?」

「え?」

気がつくと義政の顔が円のすぐそばにあって
いきなりキスされてしまった。

円は義政を突き飛ばして
店を出ようとしたその時ー

目の前にキングが立っていた。


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