王様男と冷血男の間で
嫉妬もしない男
「真蔵…」

真蔵は円を黙って見下ろすと
何も言わずに円の横を通り過ぎVIP roomへと入っていった。

円は義政にキスされたことより
真蔵に無視された方がショックだった。

(見てたよね。なのに何にも言わないの?

真蔵はもう私のことなんてどうでもいいってこと?)

「円ちゃん、ゴメン…俺…
でも好きなんだ。」

義政が円の腕を掴んで引き寄せ抱きしめる。

円は力が出なくて義政の胸に頭を寄せた。

その様子を真蔵は上から見ていた。

その頃、麻耶は宗とホテルを探していた。

「ここもいっぱいだね。」

「だなぁ。明日、祭日だからなー。」

「麻耶の部屋は?」

「え?ウチはダメ。」

「どうして?」

「だって、散らかってるし…」

「散らかってるくらい気にしないよ。
それとも彼氏が来るから?」

麻耶が同棲してる事を宗は知らない。

「今日はそれはないけど…」

「だったらいいじゃん。」

麻耶は宗にホントの事を言おうと思った。

「そうじゃなくて…ホントはいっしょに住んでる。」

「え?」

彼氏がいることは知ってたけど…
同棲してるとは知らなかった宗は軽いショックは受けたものの
今の麻耶には入り込む隙があった。

「じゃあどうしようか?」

麻耶は一瞬迷ったが
洸太を裏切ることの申し訳なさより
今は寂しさの方が勝っていた。

「今日は帰ってこないから…いいよ。」

麻耶は宗の腕をとって指を絡ませる。

「じゃあ…お邪魔します。」

そして麻耶は宗と洸太と住んでるマンションに帰って行った。

その頃、円はクラブを出て一人で家に戻ろうとタクシーを捕まえていた。

やっと捕まって乗ろうとすると
背後から義政が乗ろうとしてきた。

「送るよ。」

「いえ、一人で帰れますから。」

円は一人になりたかったので
義政が乗るのを嫌がったが義政はなかなか降りようとしない。

「どうしますか?」

運転手さんも困っている時
今度は真蔵が義政の肩を引き

「降りろ。」

と義政を降ろすと自分が代わりに乗って円の隣に座った。

「出してください。」

「よろしいですか?」

と運転手が円に聞くので円は頷いた。

「真蔵、さっきのは…」

「別にもう関係ないんだろ?

お前があの男と何しようが文句は言わない。」

真蔵はまるであったばかり頃の冷血男に戻っている。

「真蔵は何にも感じなかった?

私が義政くんに言い寄られても…

嫌だと思ったから送ってくれたんでしょ?」

「あんな状況で困ってる女の子がいたら誰でも助ける。」

円は戸惑った。

真蔵は本当に怒ってる。

結婚もこのまま本当になくなってしまうかもしれない。

「柚月さんとのこと…聞かれるのがそんなに嫌?

私との結婚もしたくなくなるくらい?」

円がそう聞くと真蔵はうんざりした顔で窓を開けて
空を見上げため息をついた。




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