王様男と冷血男の間で
仲直りはしたものの…
「結婚しないって言ったのはお前からだろう?」

真蔵が冷たく言うと円は悲しそうに唇を噛んで黙っている。

「人には秘密にしたい事もあるだろ?

お前が知りたい気持ちもわかるが
オレにも知られたくない事だってあるんだ。

全てを知って何になる?」

「アタシはただ…真蔵の全てが知りたいだけなの。

結婚するんだもん。

それがいけない事?」

「お前は人に言えない事とか知られたくない事とか無いのか?

俺に秘密にしてる事あるだろ?」

「無い。」

「絶対にあるはずだ。

よく考えてみろ。」

真蔵はそれから何も話さなかった。

本当は円にも言えない事はある。

義政の部屋に行った時、
口の周りにパスタのソースが付いて
義政がその舌で拭った
キスとも取られかねない行為をされた事だ。

でも既に義政がキスされたのを真蔵に見られてる。

円は心の中でそんな事を考えていた。

「わかった。もう聞かない。」

そう言ったものの円はまだ心の奥に何かがつっかえてる気がしていた。

でも真蔵と結婚出来なくなるのはやはり悲しかった。

「真蔵…ごめんね。もう聞かないから…仲直りしてよ。」

真蔵はまだ不機嫌なままだ。

「お前は大事な事を忘れてる。」

「え?」

「さっきあの男とキスしたよな?」

「えぇ?…あっ…あれは…向こうが勝手に…」

「だとしても簡単に許せると思うか?」

「…。」

円は言葉を無くしていた。

勝手にされたとは言え、不注意だった。

「じゃあどうすれば許してくれるの?」

真蔵は少し考えて言った。

「…来週末、一緒に旅行に行ったら許す。」

「え?」

「婚前旅行だ。

それまでにご両親に許してもらわないと…。」

円の頭の中は真蔵と泊まりで出かけるという緊急事態をどう対処しようかと考えるだけで精一杯だった。

「あの…旅行って…泊まりだよね?」

「当たり前だろ?」

「それって…」

「何だ?嫌なのか?」

「そうじゃなくて…男の人と旅行なんて…初めてで…
パパが許さないんじゃないかと…。」

真蔵は余裕の笑みを浮かべて言った。

「任せておけ。」

そして次の日の夜、真蔵が円の家にやってきた。

「申し訳ありません。
色々ご心配かけましたが…
やはり円さんと結婚したいんです。

私の相手は円さんしかおりません。

必ず幸せにします。

どうか結婚を許してもらえないでしょうか?」

頭を下げる真蔵を見て円も一緒に頭を下げた。

「お願いします。」

「円、本当か?真蔵くんと結婚したいのか?」

「うん、やっぱり真蔵がいい。

お願いします。
真蔵じゃなきゃダメなの。

この前はケンカして勢いで結婚やめるなんて言ったけど…
本当はやっぱり真蔵と結婚したい。」

父親は喜んでいた。

出来れば真蔵と結婚して欲しかったからだ。

しかし母はあまりいい顔をしない。

「一つ聞きますけど…喧嘩って何が原因だったの?」

突然母がそう聞いてきて一瞬、その場が凍りついた。





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