王様男と冷血男の間で
両親の説得
「け、喧嘩の理由ですか?」

下手なことを言ったら破談になってしまう。

「ごめん、わ、私が…クラブで遊んでたのがバレて…喧嘩になっちゃって…」

「え?」

母親はあまりにもバカらしい言い訳にキョトンとしている。

「そんなことなの?」

「う、うん。
まだ遊びたかったの。」

「ちょっと、円ったら…恥ずかしいったら無いじゃないの。」

「とりあえず、二人は仲直りしたんだろ?」

「はい。」

「それなら良かった。な?」

父が母に聞くと困惑した表情で

「はい。」

と了承してくれた。

「それでですね…祖母に報告に二人で行こうと思ってるんです。」

「え?お祖母様?」

「はい。実はお墓が九州にあってですね…

来週末円さんと一緒に墓参りに行きたいと思ってます。」

「あぁ、それはいい。
どの辺なんだね?」

「別府です。」

「良いところだな。
二人で温泉でも浸かってゆっくりしてくるといい。」

「向こうに温泉付きの別荘がありますので
円さんとそこに泊まるつもりです。

もちろん部屋は別ですから心配しないで下さい。」

それを聞いて円は少しホッとする。

「そうかー。良かったな円。」

まさかお墓参りだとは思ってなかった。

そう言われたら両親も反対はしなかった。

「決まっちゃったね。」

「旅行も行けるな。」

「ってゆうかお祖母様のお墓参りだって言ってくれれば良かったのに…婚前旅行なんて言うから焦ったよ。」

円は真蔵との婚前旅行の事で頭がいっぱいだった。

二人きりでの期待と不安が交互にやってくる。

麻耶に相談したくても麻耶はあの日、宗と消えた夜からずっと音信不通だった。

しかしその日の夜、全く連絡が取れなかった麻耶から電話がきた。

「麻耶、どうしてたの?電話は繋がらないし…大学にも来ないし…心配してたんだよ?」

「うん…ごめん。」

麻耶の声は明らかに元気がなかった。

「どうかしたの?」

「円…アタシ洸太と別れちゃった。」

「えー?
じゃあ今どこにいるの?」

「洸太が出てったの。」

「まさか宗君の事バレたの?」

「うん。

あの夜…宗と浮気してる現場見られちゃった。」

「マジで〜⁉︎

そ、それで?」

「それで洸太が切れて修羅場よ。

で、次の日荷物まとめて居なくなってた。

多分病院に泊まってると思うけど…。」

麻耶の火遊びは麻耶から大切な物を奪っていった。

自業自得だけど…麻耶が泣き出して
円は麻耶の本当の気持ちを知った。

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