王様男と冷血男の間で
麻耶と洸太
麻耶と洸太が温泉に入ってるあいだ、
円はずっと落ち着かなくて
立ったり座ったりしている。

「あの二人長いなぁ。
中で何かしてるとか…?」

真蔵はわざと円を茶化す。

「な、何かって何よ?」

「それを言わせるのか?

お前も案外スケベだな。」

真蔵は余裕で笑ってる。

円は顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「大丈夫だよ。獲って食ったりしねーから。」

「で、でも…」

「一緒に入るのが嫌なら俺の後で入ればいい。」

「ほ、ホント?」

「温泉は、一人で入ったほうが寛げるしな。
お前の裸が見る価値があるとも思えねーし。」

「なっ、なんて失礼な!」

「価値があるなら見せてみろよ。」

「は?」

真蔵は大声で笑って部屋に入っていった。

「お待たせー。」

麻耶と洸太がお風呂から上がって来た。

「お先に。あれ?真蔵さんは?」

「うん、部屋にいる。

二人は仲直りしたの?」

「…旅行中は楽しく過ごすよ。

でも麻耶とはやり直さない。」

「何で?」

「いいよ、円。浮気したのは私なんだし…
洸太が許せないのもわかるから。」

二人で一緒に温泉に入ったのに
二人の距離は縮まってなかった。

円はガッカリして真蔵を呼びに行った。

「麻耶たちお風呂上がったよ。
真蔵、先に入ってよ。」

「あぁ。良かったら後から入ってきてもいいぞ。」

「冗談言わないで!」

「何だ?浮かれない顔だな?」

「麻耶たちまだ仲直りしてないみたい。」

「まぁ、まだ時間はあるよ。」

真蔵が頭をポンと軽く叩きお風呂へ向かった。

そして真蔵が入った後に円が入った。

円は真蔵と部屋で二人きりになるのが怖くて
なかなか温泉を出られずにいた。

そうしてるうちに逆上せてしまい、何だかフラフラする。

そこへいつまでも上がって来ない円を心配した真蔵がやってきた。

「円⁈おい、大丈夫か?
円!しっかりしろよ!」

円は真蔵が来て安心したかのように気を失った。

真蔵は円を抱き上げタオルをかけると部屋まで運んだ。

麻耶と洸太はそんなことも知らずに部屋で話していた。

「それで…別れるつもり?」

「当たり前だろ?あんな軽そうな男と浮気なんて許せない!」

ホントはずっとこんな調子だった。

地獄めぐりでもケンカして
さっきの温泉でも洸太に迫った麻耶に

「触るな。浮気したくせに。」

と拒まれて麻耶は泣いてしまった。

円と真蔵に心配させないため
仲いい振りをしているが洸太は麻耶を許す気など全くなかった。





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