王様男と冷血男の間で
冷血男とのデート
次の日曜、円は真蔵と嫌々デートに行った。

待ち合わせは駅前のカフェで
窓側の1番奥の席で既に真蔵は待っていた。

遠くから見るとまぁカッコはいい。

周りの女の子たちがチラチラ見ている。

円は嫌な気がしなかったが、相変わらずデートだというのに真蔵はスーツでやってきた。

(全くTPOとか無いのかな。)

円は円でお洒落する気もなく
セーターにデニムでやってきた。

いつもオシャレで派手な円も
真蔵の為に服を選ぶ行為など冗談じゃないと思っている。

「3分の遅刻だ。」

「たった3分でしょ?」

真蔵は少し遅れただけで物凄く不機嫌だ。

「今日は映画を観る。」

「何の映画?」

「観たいものがあるのか?」

「別に。」

「じゃあオレが決める。」

とは言ったものの円は真蔵が選ぶ映画など趣味が合うはずもないと思い、
今話題の恋愛映画を選んだ。

「やっぱりこれにする。
これが観たい。」

真蔵はきっと恋愛映画とか嫌いそうだと思ったので
円はワザと選んだ。

「じゃあこれで。」

映画はシートがゆったりしたプレミアムなカップル席で
本当の恋人たちでいっぱいだった。

内容は結構濃厚なキスシーンやらベッドシーンがあって円はすこし恥ずかしくなった。

斜め前のカップルが映画に刺激を受けたのか
キスしてるのがわかった。

(何でこんなの選んじゃったのかなぁ)

真蔵は何事にも動じずじっとスクリーンを観ていた。

映画が終わると真蔵は予約したレストランに円を連れて行こうとしたが
円の服装はセーターにデニムであまりに場違いだ。

「おい、ちょっと寄り道するぞ。」

「え?ここに何の用?」

真蔵は円の手を取ると高級ブティックの中に入って行った。

「まともな格好にしてやってくれ。」

真蔵はお店の人にそういうと円には興味がなさそうに奥のソファに腰をおろした。

円は店員が選んだ清楚なワンピースを着て
真蔵の前に連れて行かれた。

「こちらでいかがでしょう?」

「靴とバッグも合うのを選んで精算してくれ。」

さほど興味ないも無さそうにそう言ってブラックカードを渡した。

「一体どういうつもり?」

「そんな格好じゃ飯も食えないからな。」

反抗的な態度を取りながらも
着せてもらった服は円が今まで手にしたことのない憧れのブランドだった。

そして予約した店も緊張するような高級店だった。

「何にする?」

「…よくわかんない。」

「嫌いなものは?」

「甲殻類はアレルギーがある。」

「わかった。じゃあそれ以外で適当に決めても?」

「うん。」

真蔵はその辺の25歳とは明らかに違う。

すごく大人で何事にも動じず、いつも冷静だった。

円はそんな真蔵が頼もしいとは思ったけど
恋愛感情など全く持たない男に思えた。

(こんな冷たい人と夫婦になんてなれるのかな…)

円は真蔵と会うたび不安になる。

真蔵にタクシーで家まで送ってもらい、
円は父に言われ仕方なく

「お茶でもどうぞ。」

と家にあげた。

家では両親が真蔵を歓迎し
円は自分の部屋に入ってしまった。

するとドアをノックするので
母親だと思って扉を開けると真蔵が立っていて
円は唖然とした。

「な、何ですか?」

「ご両親に部屋にどうぞって言われたから
断れなくてな。」

「えー?散らかってるから。」

そんな円の抵抗をあっさりと無視して
真蔵が部屋に入ってきた。





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