王様男と冷血男の間で
壊せるものなら…
まさか酔ってたとはいえ、義政にキスしてしまったとは…
初めてじゃないけど2回目はもっといけない気がした。

しかも今回は自分からだった。

(バレたらぜったい許してもらえないだろうな。)

円は何も無かったと信じてたけど
大変なことになってしまった。

「円ってさりげなくキス魔だったんだなーって。」

と麻耶が笑う。

「笑い事じゃないよ〜。」

「とにかく待たせたら悪いからはやく帰った方がいいよ。
義政とのことは絶対にバレないようにね。」

「う、うん。」

そして真蔵の車に乗った。

「飲み過ぎだって?

お義母さん怒ってたぞ。」

「…うん。」

「昨日は悪かったな。

打ち合わせすっぽかして。」

謝られると逆に申し訳ない気持ちになった。

「こっちこそごめんね。」

「酔っ払って外泊なんてもう2度とするなよ。」

「うん。」

話はこのまま終わると思っていた。

しかしその数日後、
真蔵の元に義政が会いに来た。

「円ちゃんと別れてくれませんか?」

「何をいきなり。

知らないと思うけど俺たちは3月に結婚する。」

「円ちゃんから聞きました。

でも…円ちゃんは本当に貴方でいいのか疑問なんです。

円ちゃんはあの夜、すごく寂しそうだった。」

「あの夜?」

「円ちゃん、外泊したでしょう?
あの日は俺の部屋に泊めたんです。

我を忘れるほど飲んで泣いてました。

もちろん何もありませんでしたけど…

あんな顔して幸せになれるとは思えなくて。」

真蔵はまさかと思っていたが、
あの夜、円はやはり麻耶の部屋に泊まってなかったと知ると胸が痛んだ

「それでお前は俺と円をどうしたいんだ?」

「壊そうと思ってます。

円ちゃんもそれを望んでる気がして…

貴方みたいな冷たい人じゃ円ちゃんが可哀想だ。」

「壊せる物なら壊してみろ。」

真蔵はそう言ったが最近の円を思うと
すこし不安がある。

仕事にかまけて円を放っておいたし、
結婚の準備も任せきりだ。

円は疲れていたし、不安になっていたが
真蔵は自分の事で精一杯でそれを見ないフリしていたところがある。

義政と別れて円に逢いに行きたくても
そんな時間もなかった。

円は今日も招待客の席次表の打ち合わせに1人で行ってる。

もちろん真蔵の母や円の母も手伝ってくれるが
それでも円はきっと不安に違いなかった。

夜、円が会社の近くまで来た。

「今日作った仮の席次表。真蔵の方はコレで大丈夫?
良かったら明日向こうに連絡しとく。」

真蔵は円を抱きしめた。

「どうしたの?」

「ごめんな。ずっと1人でやらせて。」

「仕方ないよ。真蔵だって仕事大変だもん。」

円は円で義政にキスしてしまった負い目がある。

「義政ってやつが今日会いにきたんだ。」

「え?」

円はまたピンチになる。


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