王様男と冷血男の間で
別居は離婚の準備ではない!
真由子の家は鎌倉にあるいわゆる古民家と呼ばれる家を改装した心地よい家だった。

綺麗に掃除が行き届いていて
アンティークな感じが逆にモダンで
海が近くて円の住んでる場所とはぜんぜん雰囲気が違う。

窓から見える隣の家は駐車場の横にサーフボードをいくつも置く台があって
小さな路地を抜けるとすぐ海に出られる。

本で見た洒落たお店が少し歩くだけでいくつも見つかった。

「良いなぁ。こんなとこで生活できて。」

「海が好きなら最高だよね。
ヤツはサーフィンやってたからさ、どうしてもここがいいって言って。
古い家でもそれなりにしたんだけどね。」

しかし肝心のダンナはここには居ないのだ。

「どうして別居したのか聞いていい?」

「よくありがちなヤツだよ。」

「?」

「浮気したの。」

真由子はつつみ隠さずストレートに言ったが
円はそれを聞いてますます不安になる。

「で?ダンナさん、女の所に行ったの?」

「まさか!実家に帰って貰ったの!

実家のが仕事行くにも便利だし…
私も離れて暮らした方がイライラしないし…。

一石二鳥ってかんじ。

まぁ、このままの状態がいつまでも続くとは思えないけど…」

マリッジブルーの円にとって別居してる真由子は自分の行く末を見てる気分だ。

「離婚…するつもり?」

真由子は円のカップに紅茶を足しながら

「ううん。多分、しないと思う。」

とハッキリと言った。

「な、何で?浮気したんでしょ?許せなくない?」

「許すつもりもないけど…
子供もいるしねぇ。

それに反省もしてるし…

正直、子供抱えて一人で育ててくのも不安だもん。」

円は真由子の気持ちが理解できなかったが
離婚することが大変な事だとは何となくならわかる。

「真由子…結婚して後悔してる?」

真由子はきっと後悔してると言うと思ったが
予想に反して真由子は違う答えを言った。

「子供は可愛いからね。後悔はしてないよ。

ただみんなと一緒に大学生にはなりたかったかなー。

だけど…あの時、あいつと会わなかったら娘も産まれてなかったワケだし…

ヤツも子供は可愛がってるからね。」

「子供が居なかったら別れてる?」

「どうかな…なんだかんだ言ってまだ気持ちあるのかもね。
愛っていうより情だけどね。」

真由子の愛の深さに円は関心するばかりだ。

もし真蔵に浮気されたら自分は耐えられるんだろうか?
なんて考えてしまう。

「円、その婚約者の事好きなんでしょ?

だったら頑張りなさいよ!
結婚って努力と忍耐が必要な事なんだよ。

それが出来なきゃ誰とも結婚しない方がいいよ。

でも好きな人だから努力も忍耐も出来るハズ。

好きだけじゃ結婚は成り立たないけど…
好きじゃなきゃ成り立たないことも沢山あるんだよ。

だいたいその人が誰か別の人と結婚しちゃっていいの?」

「それはイヤ。」

真由子の家に2、3日居て、母親となった真由子の強さに感心し、
真由子の説得もあって円はようやく家に帰る決心がついた。







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