王様男と冷血男の間で
世の中を知る?
真蔵と家に入ると両親が喜んで迎え入れてくれた。

「円、そんなカッコで真蔵君に会ったのか?」

「そこで出くわしただけ。」

「すいません。こんな恥ずかしいカッコで…」

「まぁ、円さんもまだ遊びたい盛りですから。」

真蔵は両親の前では別人のようにいい人を演じている。

円にはそれが許せなくもあり、有難くもある。

「着替えて来る。」

円は部屋に戻って1人になるとキングのkissを思い出して頰が熱くなった。

(明日も逢えるかな…)

思い出に浸っているといきなりドアが開いた。

「ちょっと、何なの?」

まだ着替え途中の円は慌てて身体を隠した。

「何分経ってると思ってるんだ?
まだ着替えて無いのかよ。」

「いいから出てってよ!」

「外で待ってるから早く着替えろ。」

甘い思い出が真蔵のせいで一瞬で崩れた。

着替え終わると円は仕方なくドアを開けた。

真蔵を部屋に入れるのは両親に心配かけない為だった。

「今日は何処で何をしてた?」

「関係ないでしょ?まだ他人なんだから干渉しないで。」

「あんなカッコで遊び歩いてると俺の関係者に知れたらマズイだろ?」

「じゃあ結婚なんて断ればいい。」

悲しそうにそう言う円を見て真蔵は胸が痛んだ。

「結婚そんなにしたくないのか?」

円は今、したくないと言ったら
父の会社がどうなるか…

そう考えると何も言えなくなった。

「結婚はする。
だけど結婚するまでせめて自由にさせて。」

「わかった。

だけど、変な噂が立たないようにしてくれ。

特に男関係はな。」

円は頷いたがキングへの思いはそう簡単に消えない。

すると次の瞬間、真蔵が下を向いている円の顎をあげ円の目を見ると

「話をしてるときは相手の目を見ろ。

わかったな。もし裏切ったら破談にするぞ。」

と言った。

円はその瞳を見て一瞬ドキッとする。

もっと冷たい目をしてるかと思ったら
綺麗な澄んだ目をしていた。

真蔵はかなりのいい男だ。

円が真蔵を真っ直ぐ見れないのはこの整った顔のせいかも知れない。

(あれ?私、どうしちゃったのかな?
真蔵がキングに見える。)

真蔵の顔にサングラスをかけたらキングに似てる気がした。

でも…どう考えても人格が違いすぎる。

「もしかしてお兄さんと似てる?」

「は?」

「そっくりな兄弟とかいない?」

「何言ってんだ?」

「お兄さん居るって言ってたよね?」

「居るけど…そんなに似てない。

上の2人とは母親が違う。」

「え?」

円はそんな事も知らなかった。

「も、もしかして愛人の子とか?」

「失礼だな。兄貴達の母親は兄貴達が小さい頃に亡くなったんだ。

俺は後妻の子だ。」

円は真蔵にも色々とあるんだと思った。

「お前、今日は何か変だな。

ま、いつも変だけど…」

「とにかく、結婚までは自由にさせて。

何にも知らないまま結婚するのは嫌なの。」

「何にも?」

「…え?よ、世の中の事をだよ。

世の中の事を何も知らないまま結婚したくないんだよ。」

「へぇ。世の中をねぇ。」

真蔵は意味深な笑みを浮かべ
疑いの目で円を見ている。

「今日は帰る。」

「うん。」

真蔵が帰ると言ってホッとした円だったが
次の瞬間、真蔵がいきなり円の不意をついてkissしてきた。

「え?…えーっ?ちょっ…な、何したの?」

「世の中の事を知りたいんだろ?

男の前で油断するなと教えてやった。

どうせ結婚するんだ。
kissくらいで別に怒ることないだろ?

初めてでも無かろうし…」

しかし円の様子を見て真蔵は確信した。

「お前、初めてか?」

円は戸惑うばかりで言葉を失っていた。






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