王様男と冷血男の間で
急接近
真蔵は大きな声で笑った。

「まさか初めてとはなぁ。

それは悪かったなぁ。」

円はショックでしばらく放心状態だった。

初めてのkissをあんなに急に
何のトキメキもなく、
よりにもよって大嫌いな真蔵に奪われてしまった。

真蔵は何事もなかったように帰って行った。

円は悔しくて悲しくて逃げ出したい気持ちだった。

「円、元気ないね。
顔色も悪いよ。大丈夫?」

「麻耶、私…アイツにkissされた。」

「え?例の婚約者?何で?なんで急にそんなに仲良くなったの?」

「仲良くなんか無いよ!

急に冗談みたいな感覚でkissしてきたの!」

「ウソ?なかなかやるんだね。

真面目な堅物なんでしょ?

いきなりkissってもしかして相当な遊び人じゃないの?」

「ただのスケべな変態だよ!」

ショックを受けてる円に同情しながらも麻耶はけっこう真蔵とうまく行くといいと思ってる。

「どうせ逃げられない結婚なら仲良くしてみたら?

他の男と恋愛したって辛いだけだよ。」

しかし円はもっとすごいことを考えていた。

「ファーストキス位くれてやるわよ!

でも、キングの事は諦めない。絶対!」

「でもキングって何者なのかなぁ。

噂で聞いたんだけどね、あのクラブのオーナーの知り合いとか言ってた。」

初めてキングの事を知る人を聞いた。

「クラブのオーナーってどんな人?」

「まだ30代くらいでかなりのやり手とか言ってた。

キングはその人の知り合いらしい。」

円はどうしてもキングに近付きたかった。

真蔵なんかに全てを奪われるのは絶対に嫌だった。

その日、オーナーに逢いたいと言ったが
もちろん相手になどしてくれない。

「店には来ない。」

の一点張りで何処にいるかも教えてもらえなかった。

そしてその日もキングは現れた。

あらためて見るとやはり何処か真蔵に似ている気がした。

キングは円に気がついて

「元気ないね。」

と言った。

「私…もうすぐ結婚させられるの。」

「え?」

「好きでもない男と結婚させられるの。」

キングは円の顔をじっと見ている。

「嫌だって言えば?」

「無理。その人と結婚しなきゃみんなが不幸になる。」

「みんなの為に円が犠牲になるのか?

そりゃおかしいよ。

円には自分の人生を生きる権利がある。

みんなわかってくれるよ。」

「お願いがあるの。」

「何?」

「私と一晩だけでいいの。

恋人になってくれませんか?」

「一晩?」

「はい。」

「円は意外に大胆だね。」

キングの返事を待ってる間、円の心臓は壊れそうだった。

「いいよ。今夜は円と一緒にいよう。」

思いもよらない返事に円は夢なら覚めないで欲しいと願っていた。

「じゃあ一時間後、向かいのバーに1人で来て。」

そう言うとキングはまた消えてしまった。

その一時間が円にはとても長く感じた。

「麻耶、私…先に帰るね。」

「どうしたの?今日は早いね。」

「用事思い出して…」

円はなぜか麻耶にもキングと会う事を言えなかった。

誰かに言ったら夢から覚めてしまいそうな気がしたから…。

そして円は向かいのバーに向かった。





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