純情シンデレラ
「たぶん、ですけど。ただ“乗るだけ”より、私が自分で車を運転できるようになれば、もしかしたら恐怖心はなくなるんじゃないかと思ったんです」
「ほぅ。なるほど」
「私が乗用車恐怖症なのは、事故に遭ったからで・・。でもそのこと自体を無かったことにはできない。それは分かってます。それに、あの時私は7歳の子どもだったから、運転免許を取ることもできなかった。だからあのとき、“自分が車を運転する”という選択肢なんてなかった」
「そうだね」
「でも今は、状況が変わってる。私は自分で車を運転することができる年齢になってるんです。私・・・いつまでもこのままじゃいけないと思う。21にもなって、会社にお勤めもして、自分でお金を稼いでいるのに、“怖いから車には乗れない”なんて子どもじみた言い訳――私にとっては事実ですけど――は、そろそろ通用しなくなってきたと思うんです」
「君はそう言うけどさ、心に傷を受けた深さに、年齢は関係ないと僕は思うよ?言い換えれば、いくつになっても怖いと思う物事は、その人にとっては、“怖い”んだ。恐怖心をなくさない限りね」
「それは・・・そうでしょうけど」
「要するに君は、乗用車恐怖症を克服したいと思ってるんだね?」
「・・・はい」と静かに、そして力強く答えた私に、有栖川さんは「んん」と言いながら2・3度頷いた。

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