純情シンデレラ
「え?」と言いながら、思わず松本さんの顔を仰ぎ見たのは、自然の成り行きだろう。
その仏頂面から、この人は嘘をついていないと、直感的に分かった。

「だ、だったらどうして中へ入らなかったんですか」
「・・・ちょうど食堂に着いたとき、君と有栖川の野郎を見かけたんだ。君たちは親密に話をしていたと思ったら、君の方からあいつに抱きついただろ?そんな光景を見てしまった以上、邪魔者の俺は消えるしかないと思って、そのまま駅に行った。・・・どうしようもなく腹が立ったんだ。俺自身に」
「親密だなんて!それは誤解・・」
「当然君にも腹が立ったさ!」
「え!?ど、どうして・・?」
「君は、俺のことを結婚したいと思う程愛しているはずだと思っていたからさ!」
「・・・それであなたはあれからずっと私のことを避けてたの」と言った私の声は、完全な棒読み状態で、自分で言ったということは分かっているけど、まるで“別の私”が発した言葉のような気がした。

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