失恋相手が恋人です
「……ん……」

目が覚めて。

重たい瞼をうっすら開けると。

目の前に薄茶色の髪と長い睫毛に縁取られた綺麗な瞼。

寝顔も驚くほどに綺麗な葵くんの顔があって。

寝起きの私の心臓がドクンっと跳び跳ねる。

動こうとして、葵くんの腕が私に絡まっていることに気付く。

私は数時間前のことを思い出して。

その瞬間、カアッと熱くなる頬。

カーテンの隙間から零れる明るい光にもう朝なのだと気づく。

……葵くん……。

恥ずかしさもあるけれど、私を抱きしめている彼に愛しさがこみ上げて、その整った顔を見つめる。

「……沙穂?」

色気漂う掠れた声が私の名前を呼んで。

私は反射的に俯く。

「……こっち見て」

ゆったりと言う葵くんに。

小さくイヤイヤをしたら。

長い指で顎を持ち上げられて。

焦げ茶色の瞳に射ぬかれる。

「……可愛い、沙穂」

ふっと笑うその妖しい魅力に私はもう何も言えなくて。

心臓が止まりそう……。

再び抱きしめる手に力をこめて。

「月曜日までここにいて」

昨夜と同じ言葉を言う。

「……む、無理っ」

即座に言うと。

「……ダメ」

甘く蕩けそうな笑顔で唇を塞がれた。

ああ、もう本当に。

……月曜日のことは。

とりあえず。

もうしばらくしてから、考えよう……。
< 117 / 117 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:197

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
  • 書籍化作品
[原題]はじまりはクールな専務との策略結婚

総文字数/107,719

恋愛(純愛)157ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
鳴海 彩乃(ナルミ アヤノ)二十八歳 繊維会社経理部 所属 × 梁川 環(ヤナガワ タマキ)二十九歳 梁川百貨店 専務取締役 「彩乃なんかと付き合うんじゃなかった」 半年間付き合っていた元彼氏に投げつけられた言葉。 去り行く彼の姿に呆然としていた。 恋を知らなかった私は彼氏の望む「彼女」になりたかった。でもそれが「恋」ではないことに気づかなかった。 あなたと私の出会いは最悪。 会社の廊下で泣く私に、あなたはひと言、言い放つ。 「邪魔なんだけど」 漆黒の髪に夜色の瞳。見惚れるほど美麗な顔立ちのあなたは私を冷淡に追い詰める。 「その髪型、全然似合っていない」 だったらどうして私の髪を綺麗だなんて言うの? 私の髪に口づけるの? 『三十歳までに結婚相手を見つけること』 地所を管理する名家に産まれた私が、都内で仕事をし、独り暮らしをするために実家から出された条件。 もう時間がない。 やって来たあなたは、私に策略結婚をもちかける。 「君は条件を満たせるし、俺は君の実家の土地を手に入れて仕事を有利にできる」 お互いの利益のための策略結婚のはずだった。 そこに恋情はない。 恋に向いていない私にはこの結婚がピッタリなはずだった。 なのにどうして。 入籍を強引に迫るの? そんなに甘く微笑むの? 私を抱きしめて毎晩眠るの? そんなに切ないキスをするの? ……好きだ、なんて言うの? あなたにはほかに想う人がいるって知ってる。 だから私はあなたを好きになんかならない。私たちはただの策略結婚のパートナー。 そう決めていたのに。 私はあなたに恋をしてしまった。 優しくしないで。期待させないで。 あなたの本心が知りたいのに口には出せない。 恋がこんなに恐いなんて、苦しいなんて、切ないなんて知らなかった。 降り積もるこの想いを、私はどうしたらいいの? ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ マカロン文庫様より2020年7月刊にて、書籍化していただくことになりました。 ありがとうございます! こちらは修正前となり、文庫版はストーリーが変更になっております。
皇命婚と告げた運命の伴侶に恋情を贈る

総文字数/127,137

ファンタジー219ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
キラナ・フォーリ   二十二歳  セレスタ帝国皇宮治療院薬師 × アレン・トゥーイッラ 二十五歳  セレスタ帝国魔術騎士団団長 トゥーイッラ公爵家長子 銀髪に紫と琥珀の目、希有な治癒の力をもつ秘されたメリハ族の直系――それが私。 メリハ族の直系は生まれたときから〝運命の伴侶〟が決まっている。 私の紫の目は、まだ見ぬ伴侶の色。 出現した手首の痣は、運命の強制力であなたを縛りつける。 「――これは非公式な皇帝命令による政略結婚だ」 美しく冷たい紫の両目は私を明確に拒絶する。 「俺たちの間に恋情など個人的な感情は存在しない」 長い指は触れるのを拒否するように強く握りしめられたまま。 私がセレスタ帝国最重要保護対象の、メリハ族でなければ。 あなたが〝運命の伴侶〟でなければ。 あなたが想う人との未来を邪魔するつもりはなかった。 「……君は、俺が守る」 あなたに恋情は贈れない。 ――私にその資格はない。 ★☆★☆★☆★☆★☆ ひめか様、温かな感想をありがとうございました!
婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
  • 書籍化作品

総文字数/102,971

恋愛(オフィスラブ)185ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
湯沢蕗(ユザワ フキ) 28歳 スターブルー・ライト航空株式会社  グランドスタッフ × 向琉生(ムカイ ルイ) 32歳 スターブルー航空株式会社 副操縦士 「ーーじゃあ、俺と結婚しようか」 さらりと言われた言葉。 躊躇いのないプロポーズが私の心を乱す。 「大切にすると約束する」 指先に落とされた、彼の薄い唇の感触に胸が詰まった。 私は実家のカフェを守るため、あなたは数々の迷惑行為対策と縁談よけに。 お互いの利益のための契約結婚。 『――もう十分がんばっているでしょう』 名前も知らない、三年前に偶然出会った男性。 孤独と不安、さみしさ、負の感情に押しつぶされそうになっていた私を救ってくれたーーきっと、訓練生。 あの男性があなたであるはずがないのに。 どうして、同じ言葉を口にするの? 名前を呼ぶ声に。 触れる指先に。 伝わる体温に。 心が壊れそうな音を立てる。 ……この想いを、どう表現していいのかわからない。 ☆★☆★☆★☆ こちらの作品はエブリスタ様でも投稿しております。 ☆★☆★☆★☆ こちらの作品は『ようやく手にした最愛の妻に、凄腕パイロットは揺るがぬ熱情を貫く』と改題し、内容を大幅に変更してスターツ出版株式会社様のマカロン文庫様より5月21日に発売していただいております。 よろしければぜひ、読んでいただければ幸いです(*^^*)

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop