失恋相手が恋人です
「……ふぅん、桧山くんね……」

ひとしきり、私のパニック涙の説明をし終えた後で。

萌恵はジロリと私を睨んだ。

「……そもそも、何で桧山くんのこと黙ってたの?」

「えっと……それは……。
だって、桧山くんのこと、好き、とか意識していなかったし……意識しないようにしていたし……。
それに、何て言っていいかもわからなかったし、恥ずかしいっていうか……」

急にしどろもどろになる私。

「何よ、それ」

意味がわからない、と付け加える萌恵。

「うう……ごめんなさい」

「もう、本当に心配したんだからねっ
バイト終わって吏人と仲良くご飯食べてて、あっ、沙穂に本の連絡しなきゃって思い出して。
それで連絡したら、いきなりの大泣きで、何があったのか全くわかんないし、吏人を引っ張って、もう慌てて駆けつけてっ」

「……はい」

「そしたらまだ告白も何にもしてないのに、桧山くんに失恋したって言い出して。
そもそも、好きだってことすら私は聞いてなかったしっ」

そこで一旦息継ぎをして。

「本当に意味がわからないわよっ」

怒りの大声を出した。

「ごめん……」

頭を下げる私。

ふうっと一息をついて萌恵は小さな声で言った。

「……でも無事でよかったよ。
本当に何かあったのかと思って焦ったんだから」

「萌恵……」

見上げると優しい瞳の萌恵がいて、私はまたもや涙が溢れてきた。

「うわぁ~ん、萌恵~」

抱きつく私に萌恵はポンポンと小さな子どもをあやすように、背中を叩いてくれた。





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