失恋相手が恋人です
何も考えずに通話をオンにすると。
「あ、沙穂?
ごめん、今日私が司書さんに預けた本のことなんだけど。
その本、沙穂が読み終わったら、私がもう一回借りたいの。だから返却する時教えてくれない?
沙穂?
……沙穂?
ちょっと?
聞いてる?」
いつもと変わらない明るい萌恵の声に。
さっきまで全然流れなかった涙が溢れた。
「……も、え……」
「え?
ちょっと、何?
沙穂っ?
どうかしたの?
泣いてるの?
何があったの?
待って、今、どこ?」
「い、家……」
「わかったっ
今すぐ行くから!
待っててっ
鍵かけてるわよね?
部屋?」
「……わかんない、あっかけてないかも……」
しゃくりあげながら私が言うと。
「危ないでしょ!
もう夜なんだからっ。
今すぐかけてっ。
とにかく行くから待ってて!」
あっという間に切れた電話。
私はヨロヨロと立ち上がって玄関の鍵を見に行った。
やっぱり鍵はかかっていなくて、自分の無用心さに笑ってしまった。
それからしばらくして。
バタバタっと大きな音がして、呼び出し音が鳴った。
エントランスのモニターに、萌恵の姿が映る。
オートロックの解除ボタンと通話ボタンを押すと。
萌恵の焦った声が響いた。
「沙穂っ?
沙穂っ?」
ガチャリとドアを開けた私を見て萌恵は、一瞬泣きそうな顔をして、それから私をぎゅうっと抱き締めてくれた。
「もぅっ、心配したよ……」
萌恵の身体は温かくて、外の新鮮な空気も一緒に連れてきてくれていた。
「もえぇ……」
再び緩みだした私の涙腺。
ひとしきり私が開け放した玄関先で泣いた後。
「何があったのよ?」
と、冷静に萌恵が言った。
「あ、吏人、いいよ。
ありがとう。」
後ろを振り返りながら。
すると。
ドアの影から気まずそうな顔の吏人くんが姿を見せた。
「何か……ごめんね。
とりあえず……沙穂ちゃん、無事みたいだから俺、一旦帰るわ。
もし、何か助けが必要だったら言って」
吏人くんは曖昧な笑顔で萌恵にそう言って、私に軽く微笑んで帰っていった。
私は何だか恥ずかしいやら、申し訳ないような気持ちでいっぱいになった。
「ご、ごめんね。
萌恵……」
「何が?
今更よ。
それより部屋にいれて」
いつも通りの調子の萌恵に、何だか安心して私は玄関の扉を閉めた。
勿論、施錠も忘れずに。
「あ、沙穂?
ごめん、今日私が司書さんに預けた本のことなんだけど。
その本、沙穂が読み終わったら、私がもう一回借りたいの。だから返却する時教えてくれない?
沙穂?
……沙穂?
ちょっと?
聞いてる?」
いつもと変わらない明るい萌恵の声に。
さっきまで全然流れなかった涙が溢れた。
「……も、え……」
「え?
ちょっと、何?
沙穂っ?
どうかしたの?
泣いてるの?
何があったの?
待って、今、どこ?」
「い、家……」
「わかったっ
今すぐ行くから!
待っててっ
鍵かけてるわよね?
部屋?」
「……わかんない、あっかけてないかも……」
しゃくりあげながら私が言うと。
「危ないでしょ!
もう夜なんだからっ。
今すぐかけてっ。
とにかく行くから待ってて!」
あっという間に切れた電話。
私はヨロヨロと立ち上がって玄関の鍵を見に行った。
やっぱり鍵はかかっていなくて、自分の無用心さに笑ってしまった。
それからしばらくして。
バタバタっと大きな音がして、呼び出し音が鳴った。
エントランスのモニターに、萌恵の姿が映る。
オートロックの解除ボタンと通話ボタンを押すと。
萌恵の焦った声が響いた。
「沙穂っ?
沙穂っ?」
ガチャリとドアを開けた私を見て萌恵は、一瞬泣きそうな顔をして、それから私をぎゅうっと抱き締めてくれた。
「もぅっ、心配したよ……」
萌恵の身体は温かくて、外の新鮮な空気も一緒に連れてきてくれていた。
「もえぇ……」
再び緩みだした私の涙腺。
ひとしきり私が開け放した玄関先で泣いた後。
「何があったのよ?」
と、冷静に萌恵が言った。
「あ、吏人、いいよ。
ありがとう。」
後ろを振り返りながら。
すると。
ドアの影から気まずそうな顔の吏人くんが姿を見せた。
「何か……ごめんね。
とりあえず……沙穂ちゃん、無事みたいだから俺、一旦帰るわ。
もし、何か助けが必要だったら言って」
吏人くんは曖昧な笑顔で萌恵にそう言って、私に軽く微笑んで帰っていった。
私は何だか恥ずかしいやら、申し訳ないような気持ちでいっぱいになった。
「ご、ごめんね。
萌恵……」
「何が?
今更よ。
それより部屋にいれて」
いつも通りの調子の萌恵に、何だか安心して私は玄関の扉を閉めた。
勿論、施錠も忘れずに。