爆走姉貴ー星路の苦悩ー
この香り……俺はよく知っている。

トラウマになるくらいに知っているぞ?






「今日は友達も一緒?」
「大学のね」
「拓也っす」
「拓也くんって言うんだぁ!カッコイイ〜!リンのタイプかもぉ」





リン…リンちゃん。


その声を耳に、俺は全身から汗が吹き出し始めていた。



そんな俺の恐怖感を悟ろうともしない雅治は、リンちゃんの視線を俺へと向け様としている!



止めてくれ…この感覚…忘れもしないこの感覚…。




「で、そっちに座ってるのが星……」
「お客様がお呼びになった人物は、現在存在しておりません!」
「何言ってんだ?星…」
「存在をよくご確認なさった上で、またの機会にお呼び直し下さい!」
「はぁっ?」



俺は死に物狂いで顔を背けた!

顔を上げてはダメだ!
このまま立ち去るべきだ!


まさに命の危険!!


逃げなきゃ……。
今なら間に合うかも!




「……俺…帰る!」
「は?何言ってんの?」
「ここは腐海だから!」




だって……。
リンちゃん………。


リンちゃんってさ……。








「帰っちゃうの?星路くん」

「――っ!!」
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