明け方の眠り姫
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今年の冬は、雪が多いような気がする。
積雪はあの日以来ないけれど、目に白いものがちらつく日が多い。


街を歩いていると、今日も空からふわふわと舞い降りてきて、思い出したのは夏希さんの為に作った大きな雪だるまだった。



「今日は休んでいいわよ」



母親がいきなりそう言って、今日一日ぽっかりと穴が開いた。
そうなると、此処しばらく仕事に集中して考えないようにしていた、夏希さんのことが当然の如く頭に浮かぶ。


あれから、結構経つけれど……急に顔を見せなくなった僕を怒ってるだろうか。
それとも、なんとも思ってないか。


ただ、やっぱり心配なのはちゃんとご飯を食べてるかということと、部屋がまたぐちゃぐちゃになってないかということと。


ちゃんと、眠れてるのだろうか。
と、いうこと。




「はあ」と吐き出した白い溜息は、雪とすれ違って空に昇る。


難儀だ。
何をやっても上手くやってる気になれない。


仕事に集中したらしたで、今度は夏希さんから逃げているような気になるなんて。


そんなことを考えながら歩いていると、元々暇を持て余して街に出て来た足は、自然と画廊へと向かってしまう。


「……あ、あれ?」


そこで僕は、扉に張り出された紙を目の前に茫然と立ち尽くしていた。

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