明け方の眠り姫
「そうですか、ご一緒に仕事を」
「そうできるようになればいいな、と思ってさ。そうしたらずっと一緒に居られるし夏希さんほっといたら仕事ばっかでほんとに自分のこと顧みないし」
「いいですね。けどそれなら、要くんも暫く大変でしょう」
「うん、まあね」
この時僕は、兄貴とのことを思い浮かべていたのだが。
マスターが示したのは、もっと別の、更には最も根本的なことだった。
「フランス語がさっぱりでは、仕事にならないですし……今から猛勉強ですね」
「……」
ぴた、と言葉を失った僕に、マスターは気付かずに(ってか絶対気付かないフリだ)更に追い打ちをかける。
「ああ、それに絵画のことも多少はわかっていなければいけませんね。今のままでは、足手まといになりかねませんしね」