ブラックドレスに甘い毒牙を隠して…
一人 まっすぐ家には帰らず、自らあの忌まわしい事故のあった交差点に向かう。
本当なら一番立ちたくない場所であり、悲しみが増す場所。
綾己の最後を看取った場所でもある。
交差点を後ろから ただじっと見つめていると、携帯が鳴り出した。
「 …弥生?」
『 そう!ところでさ、お見舞いに来てよ~ 熱下がってヒマなの 』
「 わかった、待ってて 」
しょうがないな…
高須 弥生は高校に入ってからの友達。
風邪を引いて今日も休んで2日目。
声の調子だと明日には登校できそうだ。
交差点に背を向けて弥生の家に向かう。
なんか買っていった方がいいかなぁ…
途中コンビニで適当にカップデザートを買っていく。
弥生の家は私の家からは遠いが 帰り道より中に入って行けば学校からは近い。
弥生の家に着くと、二階にある部屋から私が見えたのか弥生が玄関を開けてくれた。
「 里桜!」
「 元気そうだね、弥生 」
「 まぁね。入って 入って!」
「 うん。はい これ、お見舞い 」
「 さすが委員長ね~ 」
弥生の部屋に行くと、弥生の親は仕事で留守だった。
私の親も共働き、その分 親に悲しみを見せることはほとんどなく過ごしている。
私には都合がいい。
「 里桜、彼氏とはどうよ?」
「 どうって、何が?はい、これノートね。あと 明日はテストあるからね 」
「 里桜… あんたって真面目というか 味気ないよ?あんなイケメン彼氏いるのに 」
そんなの どうだっていい…
そんなこと 言わないで……